●考える! 考える! それが経営者の仕事

考える! 考える! それが経営者の仕事であり、習性です。
それが嫌なら、経営者としては不向きです。

なぜ考えることが必要なのでしょうか。
チャレンジに勝つためです。
成功するためです。

戦争は正しいから勝つわけでも、悪いから負けるわけでもなく、
勝つから正しくなります。
だから、勝たなければいけません。

ビジネスにおいても事情は同じで、
顧客や市場のニーズ・欲望・期待というチャレンジに勝つ、
競争相手に勝つ、逆境に勝つ、勝負どころに勝つ、
それらがあって初めてビジネスは存続でき、
成功を収められます。

だから、勝つためにはいろいろ考えることが必要になります。
しかも、一回勝つだけではだめで、
勝ちを継続させる必要があります。

成功を維持することも大変な仕事です。
だから、考える習性が必要になります。

確かに、まぐれでうまくいったり、
ビジネスの価値観・一貫性に問題があっても、
一時的に成功することもあります。

しかし、それを持続させることは難しくなります。
なぜなら、市場や消費者は決してバカではないからです。

では、成功を継続させるにはいったいどうしたらよいでしょうか。
また、なかなかうまくいかない現状を
うまくいかせるためにはどうしたらよいでしょうか。

志を高く持ち、常に考える、その一言につきます。
そして、志の強弱が考える活動の強弱を決定します。

「ビジネスとは、儲かればいい、面倒くさい理屈などどうでもいい」
いまはもう他界した彼の口グセでした。

それですんでしまった時代もありましたが、
世の中が複雑化、多様化、競争が激化している現在にあっては、
そういう考え方だけでは一時の成功を維持することは難しくなります。
あなたの場合はいかがでしょうか。

物が不足している時代であれば、
物さえ持てばいくらでも売れる時代でした。
戦中の軍需産業、終戦後の日本がそうでした。

自分のビジネスが珍しかったときは、
それゆえに勢いでビジネスは伸びました。

しかし、その珍しさ、新規性が失われたとき、
それでも利用者が愛用してくれるためには、
それなりの体制と特徴がなければいけません。

一つのブランドがファッション化しているときは、
そのブランドさえ持っていればいくらでも売れました。

しかし、そのブランドが魅力を失ったとき、
また、ブランド取扱店があちらこちらに登場したとき、
それでもあなたのビジネスを利用する理由がないと、
客離れが起き、ビジネスは尻すぼみになります。

健康志向幕開き時代には、
いわゆる健康関連商品を提供すれば、
ビジネスはうまくいきました。

その地区で一軒で、競争相手不在のときは、
何を置いても売れる時代でした。

しかし、健康商品がいたるところで手軽かつ安価に手にできる現在、
それでもあなたを利用するだけの理由がなければ、
ビジネスは尻すぼみの運命になります。

このように、一時的に成功することはよくあることです。
しかし、よいことには必ず終わりがあります。
その次の展開を考えなかったビジネスは、
当然のごとくビジネス社会から淘汰されてしまうのです。

時代は変わる、商品は陳腐化する、競争相手が登場する、
そして何より、消費者のニーズ・欲望・期待は猫の目のごとく変わる、
そういった真理を無視すれば
ビジネスはそのつけを支払わなければいけなくなるのです。

だから、経営者は常に考えることが必要です。
単純、素朴だけでは経営者は務まらないのです。

考えるとは、それだけ判断材料を仕入れることを意味します。
判断材料になるのは、
気付き・情報・知識・助言・ニュースといろいろですが、
毎日氾濫するそれらの中から、
必要とする材料だけを取捨選択する意識と力、
それらをいかに組み合わせ、ビジネス展開力にできるかが重要です。
だから、そういう活動習性が経営者には必要です。

次に、決断にあたっては、常に選択肢を持つ習慣、
そして、その選択肢の中からこれだと思われるものを
一つだけ選び出す勇気と、
その決断への根拠を持てることが重要です。

そのためには、自分が置かれた現状の正しい認識、
世の中の動き、市場や消費者の動向を把握していなければいけません。
考えるとはそういった一連の活動を指します。

さて、ここまで言うと、
すでに面倒くさいと感じてしまいますか。

そうです。私の知人は、この段階で、
「そんな面倒なことはどうでもよい。要は金を儲ければよいだけだ」
と口にしたものです。

結果にこだわり、そんなことを考える間に
金儲けに専念すればよいとの考え方でした。

昔、私の友人のおじさんは、どんどんお金を稼いでいました。
不動産業者で、いくらでも不動産が売れた時代。
学生の身分でありながら、
ときたま高級キャバレーに連れて行ってもらったものです。
金が儲かるとはこういうことか、そう感じたものです。
しかし、彼の幸運はそう長続きしませんでした。

世の中には○○御殿という言葉があります。
一つの物でお金儲けをした人が建てた豪盛な屋敷を指しますが、
その家の持ち主が代替わりしている例が多く、悲哀を感じます。

一時的でなく、本当にビジネスで成功している人、
金儲けで成功している人は、
仕掛けをすることによりそれらを達成しています。

成功も金儲けも待って得るものではなく、
仕掛けてビジネスチャンスをつくり出し、
それにより成功し、金儲けを達成しているのです。
考えた末の結果なのです。

待って得られる成功、金儲けは、
あくまでも一時的ものにしかすぎません。

私のところには、日本のビジネスからの問い合わせや
アメリカで起業しようとする方からの問い合わせがたくさんあります。

これらの方に目立つのは
1. この○○はアメリカでは売れそうですか、と
自分での調べを忘れているケース
2. ○○しなければいけないと思うのですが、と
日本そのままのやり方にとらわれているケース
3. 紹介やコネを依頼してくるケース
4. 大手企業に売りこめば、後はすべて面倒を見てくれると
依頼心だけのケース
5. これを売り込んでいただけますかと、すべて丸投げの進出姿勢ケース
6. 自分がすべき下準備をまったくしていない状態での相談ケース
7. アメリカンドリームに魅了されるのは結構ですが、
誰かの出資を期待するだけのビジネス展開ケース

つまり、自分なりに考え試行錯誤する姿勢、
志を感じさせる姿勢に欠けている点が気にかかります。

今回は、考えるとはどういう活動か、
それを考えてみましょう。

●考える行動の中心軸は、“志”です。

志の強弱が考える力を決定してしまいます。
志、つまり、どうしても実現したい、達成したい、
そういう気持ちがあるからこそ、それが判断基準になり、
その実現のためにベストと思える方法を模索し、
どうやってそのやり方を市場に進出させるか、
その方法を考えることになります。

志がなければ中心軸がなく、
どう考えてよいかか判断ができなくなってしまうのです。

目の前に現れたテーマをどう捉えるかは
視点の置きどころによりまったく異なってきます。

その視点が志で、それを持たない判断活動では
考えるための考える行動で、どこにもたどり着くことができません。

例えば、この商品を取り扱うべきか否かというテーマが出たとき、
その商品自体をいろいろ調べ、
市場での実情を調べるいわば市場調査により、
取り扱い可否を決定する姿勢がありますが、
ビジネスは自分のビジネスのビジョン、
つまり、志から取扱商品を眺めます。

アメリカ人社会のどの分野に進出したいという志があれば、
その市場の実体とニーズ・欲望・期待を調べ、
それに対応できる商品か否か、歓迎される商品かを判断、
もしくは、それにマッチした商品を探すことになります。
考えるとはそういう行動です。

また、寿司店がアメリカ人相手に展開したいとすれば、
本格的寿司職人を考えるより、
アメリカ人と英語でコミュニケーションをとれる
明るくサービス精神旺盛な職人を優先することになります。
志が、職人選択肢を決めていくことになります。

また、たまたまある商品・サービスでうまくいっている場合、
それをもっと普及させるには、従来の方法では限界があるのではないか、
そういう発想を持ち、
次元の違うレベルの仕事を達成する方法とはどうすることか、
そういう発想で新たな方法を模索することが、考えるになります。

志が考える姿勢を促進し、おかげで志を達成することになります。
これは、従来○○のコストをかけて○○の結果を得たから、
今後は○○○だけコストをかけ、
それにより○○○の結果を出せるという発想とは異質のものです。

●考えるとは、必要不可欠な判断材料を持つということです。

考えるためには、判断材料を持たなければなりません。
しかし、その判断材料は、雑学的に何でもではなく、
志を達成するために必要と思える情報・知識であることが必要です。
それを選別する活動が、考えるになります。

●考えるとは、推敲するということです。

いろいろな選択肢を持ってから、選択肢をを比較検討し、
その中でベストと思える方法を選別する、それが考えるです。

●考えるとは、現状改善・革新活動です。

ビジネスがうまくいっていない場合、
それをうまくいかせる方法を模索する活動、
それが考えるです。

志がなければ、もしくは志が弱ければ、
根本解決・対応がなされず、
自転車操業レベルになってしまいます。

●ビジネスにとってベストな判断を下す、それが考えるです。

つまり、考えるとは、志を持ち、
その志達成のための方法をいろいろ模索し、比較検討して、
ベストと思える方法を選別する活動ということになり、
そのためには、ビジネスの現状を把握し、
市場の動き、消費者の動きをしっかり把握し、
そういうバックグラウンドを持って、
志を判断尺度としてすべてを取捨選択して、
その上でベストな方法を決断する活動ということがわかります。

●考えるとは、勇気を要する活動です。

決断・考え・判断には、
常に、これは正しいだろうかと不安がつきまとうものです。

しかし、自分なりに尽くせる努力はすべてした、
そういう確信があればこそ、
自分の考えに自信を持つことになります。
それができないため、多くの経営者は判断を誤ります。

もう一度繰り返します。
なぜ考えるか?
それは勝ちたいからです。
成功したいからです。

そして、その考える起爆力、中核になる理由は、
本人の持つ“志”になります。

だから、考えるのです。
結果を出したいから考えるのです。

さて、今のあなたは考える経営を行っていますか。
それとも、惰性に流されてはいませんか。

もしそうだとすれば、あなたは起業したときの
あの志を失ってしまったのではないでしょうか。

だとすればおおごとですね。
どうします、あなた。

(メルマガ『アメリカ発!「スモールビジネス」成功のセオリー』2015年8月24日発行 Vol.788より)