安くすればお客が飛びつく?

安さが集客力のポイント?
それは違うと、頭では何となく理解していても、
目前の価格競争は熾烈さを増すばかり。

あなたは価格競争に敏感すぎていませんか。

お忘れなく、消費者は価格だけでは
ビジネスを選別していないということを。

似た例として、会員制が非会員制ビジネスより
うまくいくというわけでもありません。

どの形式をとろうが、それなりの差別化を図らなければ、
競争に勝てないのが現実です。

目下、日本の大手家具店でお家騒動が起きているようで、
その動きが毎日報道されています。

父親が会員制にこだわるのに対して、
長女は非会員制を主張している点が争点になっているようです。

ロサンゼルスで会員制で成功していた日系スーパーチェーン店は、
非会員制の競合他チェーン店に対抗すべく、
非会員制の支店もオープンして、両刀使いで運営。

一方他の2つのチェーン店は、従来通り非会員制で対抗し、
それぞれの特徴を出しながら競争しています。

会員制のほうがうまくいくのか、
それともそれが成長を阻害するのかは、
今後の動きを見守りたいと思います。

アメリカでは会員制のチェーン店がいろいろありますが、
その両雄はCostco(コストコ、会員制の1位)と
Sam’s Club(サムズクラブ、会員制の2位)で、
店舗数ではサムズが、売上ではコストコが上回っています。

一般消費者のいろいろな調査によると、
価格は両者とも一般食料品チェーン店よりも大幅に安いようで、
会員にとっては大きな節約になるようです。

会員制チェーン店の強みは、
会費が売上の大半を占める点にあります。

両チェーン店ですぐ気づく違いは、
従業員への福利厚生費と給与差です。

コストコはサムズより42%多く支払っており、
会員と従業員を厚遇することをポイントにしています。

会員にはより安く商品を提供し、従業員にはより高い給与を、
その財源はより多くの会員数と、より多くの売上になります。

従業員を優遇することにより、従業員の離職率を低く押さえ、
従業員による商品盗難を低く押さえることができるそうです。

コストコに見られる競争を有利に導く戦略は、
店舗配置に経済的に強力な州や地域を選別し、
景気に左右される展開を回避している点にあります。

安売り店だから安売りを必要とする人々のいる地域に開店するのではなく、
中流から高収入地域に的を絞っているのが特徴です。

ビジネス展開スタイルの違いは、
コストコは商品取り扱い品目をサムズの半分以下に抑え、
それらをより大きなユニットで販売し、
単価を安く提供しています。

価格ポリシーに関しては、一般商品については14%以上、
自社ブランド商品については15%以上の利幅にし、
一般スーパーマーケットの25%、
デパートの50%の利幅に対抗しています。

コストコの強みは自店ブランドで、
ナショナルブランドより品質を高めた自社ブランド商品をつくり、
それらを安く提供しています。

それが、サムズより200店舗以上少ないわりに、
会員数では1500万人以上多く獲得していて、
収益性も高い理由のようです。

両者の安売りへのアプローチにも違いがあり、
コストコはサムズより高い年会費をとり、
代わりに安くをテーマに大きな商品ユニットで提供しています。

これに対して、サムズは、無駄にならない、また、
保管に困らない程度の大きさのユニットにして提供しています。

また、大型商品や電化製品では、
圧倒的にサムズが強いようです。

ただし、商品返却に関しては、
コストコのほうがすんなり応じてくれるそうです。

いずれにしても、両安売り会員制チェーン店でも、
価格だけに頼らない競争が行われています。

ついでに、消費者の好感度を勝ち得ているのが、
コストコのトップ経営者のベーシック給与とボーナスを含む給与が、
全米各社総売上の比較において29位を占める企業のトップにかかわらず、
大手企業経営者給与の10分の1以下に抑えている点です。

大株主ですので、実際の個人資産価値は、
ビジネスの発展に伴い巨額の価値になりますが、
給与面における彼なりの姿勢が、会社に対する好感度を高め、
従業員の彼の経営に対する忠誠度を強化しているようです。

このようなもろもろのポイントが、
消費者の愛用店選択に影響を与えているようで、
消費者はショッピングにおいて選択するのは
価格だけではないということがわかります。

安さだけならコストコ、それならすべての人がそちらに、
というわけにはいかない事実が鮮明です。

大手の例を出したのは、
競争社会における「差別化を図る必要性」と「その具体的やり方」、
そして、「競争力を高めるやり方」の具体例を
見ていただきたかったからです。

さて、あなたのビジネスは、
類似他社との違いをどういうポイントに置き、
それによりどう集客力アップを図っているのでしょうか。

消費者は価格だけで動くのではない。
また、安い店だからすべてが安いわけではなく、
割高なものもピックアップしている。
安さを求めて来店していても、
ショッピングにおいては
いちいち高い安い判断を下しているわけではない。
それらの事実を忘れないでください。

安売り愛用顧客の姿勢は、まずは価格から選択します。
商品の類似性が本当はどう違うかなどあまり見ません。
安ければ歓迎です。
おかげで価格のトリックに
簡単に引っかかってしまう傾向があります。

例えば、
40オンス瓶2本入り$9.16と
48オンス瓶2本入り$10.99があると、
どちらにするか迷いますが、
支出の少ない$9.16を手にします。

32オンス$18.98と
40オンス$19.99があると、
どちらにするか迷いますが、
支出の少ない$18.98に手を出します。

225オンス$13.95と
195オンス$12.99があると、
どちらにするか迷いますが、
支出の少ない$12.99を選びます。

つまり、オンスあたりで本当はどちらがお得かなど計算せず、
支出の少ないほうを選ぶ傾向があります。

皆さんもマーケットに出かけて、
消費者の選択行動を見ていると、
とても参考になるはずですよ。

私のお客でも、食料品マーケットで売っている弁当と
なんとなく似ているというだけで、
彼らに比べ私たちの弁当は高いと口にするお客がいます。

「ああそうですか、
ところでそちらのお弁当を試したことがありますか」と聞くと、
ほとんどの場合、見てはいても試したことのない方ばかりです。
価格だけは覚えているのですから面白いものです。

私たちの弁当価格は$9.25で、
他社は$6、$6.50、$7、$8.75と全社私たちより安い価格で、
毎日どこかでかち合っています。

私たちは価格競争に巻き込まれず、
自分たちなりのお客獲得に的を絞り、
彼らに他社との違いがわかるお客サービスを実行しております。

現実には、顧客はいずれかの安い弁当を
過去試したことのある方たちばかりで、
おかげで私たちのアプローチは簡単になっております。

その差別化のおかげで、
私たちを利用してくれた方が、
一時的に他社の安い弁当を試しても、
短期間に戻ってきてくれます。
胃袋は正直なものです。

では、商品、サービスが何であれ、
価格意識の強い消費者相手に、
私たちはどのような対策を考えるべきでしょうか。

以下、消費者の動きを眺めてみましょう。

憧れの人が持っていると欲しくなります。

我も我もと皆が買い出すと、負けずに買い出します。

タイミングが合うと、購買決断が早くなります。

用途に応じて判断基準を変えます。

あまりに素晴らしいと衝動買いします。

金があるとつい気が大きくなり、
平素の慎重な姿勢を失います。

自分のためには買わなくても、
他人、とりわけ家族や恋人などのためには価格を無視します。
この場合、価格の高低はあまり問題になりません。

特別なイベントや祝日には散財する傾向があります。

何にお金をかけるかは、人それぞれです。
金持ちが必ずしも高い物ばかり買うわけではありません。

大型商品購入(車、家具、ボート等)には、
品質、維持費、修理費等、もろもろの検討を始め、
慎重になります。

大型サービス購入(旅行等)には、自分の好みが優先し、
価格は後回しになります。

医療ケアへの出費は、命にかかわる問題で、
まずはその質を検討し、支払いは後で考えます。

不動産に関しては、再販価格を検討します。
資産へ投資という考え方が強いからです。

同じ買うならブランド物、ないし有名な方を買います。
そのほうが信用が置ける、そう思い込んでいるようです。

クーポン等割引特典は喜んで利用します。

他人に見えるものは良いものを、
自分だけで済ませるものは何でも、の意識があります。

外食に関しては、その利用目的で場を替えます。

通常、節約に励んでいる人は、
あるとき、ストレス発散のごとく思いきった使い方をします。

このように、消費者は、
その時々の背景、事情、目的、感情により、
お金の使い方が変化するもので、
決して一つの思想が
支出をコントロールするわけではないことがわかります。

また、その人の従来の生活習慣、
そのときの収入によって左右されていくようです。

そこまで理解できると、
すべての人に合わせたアプローチは対応不能で、
自分たちが主導権を持って一定のターゲットに的を絞り、
一定のアプローチを駆使するやり方が、
最も実際的な解決方法ということがわかります。

価格で勝負するビジネス、
品質で勝負するビジネス、
信頼で勝負するビジネス、
ブランドで勝負するビジネス、
手軽さで勝負するビジネス、
便利さで勝負するビジネス、
手作りで勝負するビジネス、
健康志向で勝負するビジネス、
知識で勝負するビジネス、
実績で勝負するビジネス、などなど、
ビジネスが自分の持ち味を活かすやり方は、
無限にあるような気がします。

もちろん、それらは決して単独でというわけではなく、
複数のやり方を駆使したやリ方が使われます。

さて、近くにある同業者、類似ビジネスと
お客の奪いあいを繰り返すあなた。

相手は何をプッシュしているかご存知ですか。
それに対してあなたはどういう手を打っているのでしょうか。

あなたのビジネスの特徴を、あなたは一言で人に話せますか。
あなたが説明できないようでは、また、こんがらがっているようでは、
きっとお客もこんがらがっているのではありませんか。

気になりませんか、あなた。

(メルマガ『アメリカ発!「スモールビジネス」成功のセオリー』2015年3月16日発行 Vol.767より)