お客が離れていく……どうしましょう?

大手牛丼チェーンの客足が大幅にダウンしたそうです。
(もっとも客足とは、リピートビジネスが減ったのか、
お客の絶対数が減ったのかは不明)
理由は値上げによる影響です。

世界最大サンドイッチフランチャイズチェーンが
客離れに泣いています。

会社のスポークスマン的人物が
子供の性的虐待容疑で捜査を受けているばかりか、
時代の流れ、つまり他店が強調するオーガニックへの動き、
グルテンフリーへの対策に遅れてしまい、
消費者がマンネリ化した同じ商品にあきだしたからだそうです。

専門筋によると、
彼らのビジネスはもっと多くのフランチャイズ店を獲得することにあり、
それが商品開発を遅らせている理由と指摘しています。

理由はともあれ、客離れ、それによる売上の大幅ダウン、
経営者にとっては頭の痛い問題です。

問題が発生したとき、その解決方法模索で重要なことは、
競争相手と同じ視点やレベルの見方をしないことです。

コストを下げる工夫、売値をあげる工夫といった
ありきたりの発想では競争力は生まれず、
それ以上に問題は、
差別化・個性化ができなくなってしまうことです。

客離れの問題も、取り戻す工夫という発想から脱却してこそ、
道が開けます。

具体的には、従来市場にこだわったアプローチを忘れ、
商品へ新たなアプリケーションや用途を付加することによる、
新たな市場の開拓・創造志向を持つことが必要です。

大きなビジネスであれば、
その資金力を駆使して新たな地域に出て、
そこでのビジネスを掘り起こすことも可能ですが、
スモールビジネスには向かないアプローチです。

今いる場で、新たなニーズや欲望・市場を作り出す、
そこに突破口があります。

通常、固定客とは一生固定してくれる客ではなく、
いつの日か去っていく客です。

ですから、お客が離れていくといっても、
いちいち心配する必要などありません。

しかし、もし離れる客の割合が多い、
大きなお客が離れていく、
上得意のお客が離れていく、
長年のお客が離れていくようだと、
自分のビジネスを見なおす必要があります。

さあ、どうしましょう。

客離れは、
たまたま客になっただけで特別な思いがあったわけではない場合、
お客が自分の期待しているものを得られない場合、
お客の関心を奪う競争相手が登場した場合、
ビジネス自体に対して信頼感を失った場合、
時代にそぐわない場合、
市場の変化に対応していない場合、
などに発生します。

ビジネスは通常、
自分のビジネスは誰を対象とするのかを明確にし、
その対象が求めるものを提供していきますので、
その対象外の人にとっては、
自分の期待しているものを得られることは少なく、
必然的に去っていきます。

それはビジネスの方向性が明確化できた証拠ということになります。
ですから、心配の必要はありません。

しかし、そのビジネスの姿勢が、時代に沿っていないと、
客離れが起こります。

多くのビジネスは売上という一点から見て、
客離れを問題視しますが、
ビジネスの個性化、差別化、競争力という対象絞込観点から見ると、
違う評価をしてもいいかもしれません。

たとえば、収益性という視点から
問題のあるお客が離れていくケースは
返ってありがたいことかもしれません。

また、客離れが一時的理由により発生する場合もあり、
その理由がはっきりしているときは、
その原因が除去されたり、その直接の影響が薄れたりすれば
問題がないことになります。
価格値上げ直後はそういうことがよく起きるものです。

自由競争社会では、目前に競争相手がいようがいまいが、
競争は常に展開されており、
その競争に勝つ秘訣は、
同じことを相手よりうまくやる、
勝つやり方をするだけが答えではなく、
他社が真似しようと思ってもできない特色を出して
自分のビジネスを展開する必要があります。

それは特許・実用新案・著作権を持った展開であったり、
ブランドを持ったやり方、独特のサービス、雰囲気といろいろで、
要は他のビジネスが真似をしようとしても
真似のできない自分独自のカラーを、いかに出し、
それをどう市場に受け入れさせるかの勝負になります。

すると、そのビジネスの方向性やポリシーに
ついていかれないお客は当然離れていくことになります。

会社の成長スピードや方針に従えない人は脱落し、離れていきますが、
それと同じ動きが対お客にも繰り返されます。
ビジネスでも会社でもその動きに乗れる人を求めているのです。

と同時に、もう一つ認識すべきは、
お客は選択肢を持ち、お金を払う存在であるという事実です。

だから、お客は自分が好きな誰とでも
ビジネス取引する権利があるという事実です。
一つのビジネスと運命を共にする必要など感じていないのです。

つまり、ビジネス側の誰を相手にビジネスを展開しようという希望と、
お客は選択肢を持った存在でありお金を支払う存在で、
この両者がマッチしてこそビジネスになり、
お客が離れるとは、それが一時的にマッチしたが、
そのマッチはあくまでも一時的なものであったという事実になります。

所期のテーマは、いかに両者の利害をうまくマッチし、固定化させるか、
それ以上に、従来市場にこだわらない、より大きな新たな市場創造への発想、
それが今回のテーマになります。

ビジネス側の対応としては、
的を明確に絞りこみ、それを目当てにする人々が利用しやすくし、
かつ時代の変化に応じて対応していく姿勢がなくてはなりません。

つまり、ニーズや欲望、期待に添えるポイントを明確にすることにより、
それが理由にビジネスを利用してもらう体制の確保が必要です。

ということは、そのニーズ・欲望・期待が満たされなければ、
彼らは去っていくということになります。

そこでお客を引き止めるための工夫、
新規顧客を呼びこむための工夫が必要です。

それに並行して市場の見直しが必要です。
従来の市場は市場として存在しているのか、
それともまったく異質のものへ変貌しつつあるのか、
そのあたりの見直しも忘れてはなりません。

市場自体が縮小ないし消滅に向かっている状況では、
もはや単なる客離れといった問題ではないからです。

今回は順を追って考えてみましょう。

まずビジネスは何をテーマに展開するか、
誰を対象として展開するかを明確に絞る必要があります。
それにより戦略・準備・体制作りが可能になります。

しかし、留意すべきは、
その市場・対象自体は刻々変貌するものであるということです。

時代は動いており、動きながら変化し続けています。
だから、時代を取り込んだ展開が不可欠です。
それを忘れて固定化した動きにこだわれば、
固定客がそっぽを向くようになってしまいます。

また、固定客の離反というより、
そういう市場自体が消滅に向かっているため
顧客が離反しているように見える場合すらあります。

そのためには、市場に対する視点の置き方の見直しが必要です。
金持ち相手の展開といった漠然としたアプローチではなく、
本当に価値あるもの、高級品だけを扱うビジネス展開、と的を絞れば、
金持ちかどうかのステイタスではなく、
そういうものを必要とする人がそれを目当てに利用します。

ファッションで有名なビジネスは、
今どんなファッションが流行っているのか
それを知りたい人を引き寄せます。

結婚引き出物専門会社であれば、
結婚の引き出物を選びたい人を引き寄せます。

移民法専門弁護士、離婚専門弁護士、遺産相続専門弁護士、
交通事故専門弁護士、破産法専門弁護士、税金専門公認会計士、と
専門を掲げれば、それを目当てにする人を引き寄せるにことができます。

次に、商品・サービスに対して、
従来通りの用途・価値・活躍の場に満足せず、
新たな用途・価値・活躍の場を生み出す必要があります。

顧客を取り戻す発想では将来は生まれません。
早い話、これに成功すれば、
新たな市場創造が実現できるのです。

従来の発想を踏襲すれば、
従来に戻ることに成功できても、
将来性とは無縁に終わるようでは意味がありません。

取り戻すとは、昔に戻ることで、
顧客離れというチャンスを将来創造に活かせなくなってしまいます。

また、多くのスモールビジネスは、
オンラインにしても固定店舗ビジネスにしても
あまり代わり映えのしない商品を扱っています。

全体の需要が増えない限りビジネスの取り合いですので、
当然顧客離れは日常的現象です。

顧客を取り戻す意識にとらわれれば、コストだけアップし、
一挙に収益性が悪化することになります。

そうではなく、商品なりビジネスなりに変化をもたせ、
自分なりの市場創造、そこに道が開けるのです。

まんじゅう屋さんに客離れ、
豆腐屋さんに客離れ、
コスト削減や売上アップ努力だけでは、
現状打破も将来創造も難しくなるのではないでしょうか。

必要なこと、それは新たな市場創造です。
どうやって? それこそがテーマであり、
客の取り戻しレベルの問題ではない、
そういう気づきがあってこそ、
真のビジネス展開も可能になるはずです。

さて、あなたのビジネスの新たな市場とは
いったいどういうものに成るのでしょうか。

(メルマガ『アメリカ発!「スモールビジネス」成功のセオリー』2015年7月13日発行 Vol.782より)