わからないことは確かめる、決して勝手な思い込みで行動しない

法律・規則がからむ場合、不確実なまま行動せず、
必ず内容を確認してから行動するようにしてください。
さもないと高い代償を払う羽目になります。

最近はオンライン情報の氾濫で正しい情報入手が困難になっています。
正しい答えを引き出そうと思ったら、正しい質問をする、
ぜひ心してください。

たとえば、アメリカは50州で、
規則は州や地方自治体により異なるため、
同じ質問に対する答えはイエスであったりノーであったりと異なってきます。

また、同じ州であっても、市によって規則が異っており、
自分の所ではOKだからと油断していると、
他の市では違反チケットを切られてしまうことになります。

質問する場合は最適な回答者に絞り、
かつ質問をより明確にすることにより、
はじめて正しい答えを引き出せることになります。

たとえば、
くわえタバコで歩いてもOKの場所とNOの場所、
携帯電話を見ながら歩いててもOKな場所とNOの場所、
道路駐車に関して前の車が出たのでそこに駐車したら、
前の車の残り時間があったのでそのままお金を入れず駐めてOKの場所と
新たに入れなければ違反チケットを切られる場所、
家を売るためテナントに立ち退きを要求するだけですむ場所と
レントコントロールのある市で立ち退き料を支払う場所、
ビールなどのアルコール飲料が
スーパーマーケットやコンビニで手軽に入る場所と
酒類専門取り扱い店でしか入手できない場所、
ウェイトレスはチップ収入者なので最低賃金保障が不要な場所と
ウェイトレスにも最低賃金が保障されなければいけない場所など
いろいろです。

たとえば、アメリカでの最低賃金はいくらですかという質問が出れば、
住んでいる人の地域によって答えがまったく異なってきますので、
簡単に誤解が生まれてしまうことになります。

それは質問者が質問事項を絞る必要に気づかなかったり、
そういう実情に気づかないからです。

そして、それに対する答えだけが正解としてひとり歩きし、
それにより誤解が広がっていくことになります。

このような違いが無視されたままオンラインで議論されると
混乱が生じることになります。

意見を述べる人の市はどこかの前提がスキップされると、
その人にとっては正しい意見であっても
受け手の人の市の実情が異なっている場合が考慮されず、
質問に対する答えだけがひとり歩きしてしまうからです。

今から述べるアルコールライセンスのないレストランへの
アルコールの持ち込み問題も、
その人の住む場所により正解が異なってくるケースになります。

多くの方が犯す間違いは、
オンライン情報で答えを得たと錯覚し、すぐ行動してしまうケース、
一切を無視して自分なりの判断で行動してしまうケース、
専門家に相談せず知り合いに相談して、正解のないまま行動してしまうケース、
弁護士やその他のプロフェッショナルに相談を考えても
料金が高いため相談をためらい、無知を無知のまま放置し、
あとで大ごとになってしまうケースが多いようです。

許認可・規則・罰則、それがなんであれ、
役所に関することは、まず役所に直接問い合わせてください。

役所と考えると難しく感じてしまいますが、
そこで働く人々は皆親切に教えてくれることが多いものです。

私の場合、昔永住権交付が著しく遅れており、
その最中に父が死亡し、葬式に参加するため出国したかったのですが、
カードがなく出国できない状態でした。

そこで、ダウンタウンの移民局の担当者に直接相談したら、
彼がすぐ調べてくれて、
私の姓と名が面接の段階でひっくり返されたため、
DCと西部地区のコンピューターがマッチングできず、
永住権がいくら待ってもこなかったことが判明して、
その場で永住権者の一時出国というスタンプを押してくれ、
すぐに日本に向かうことができました。

出国できたばかりか、
それからしばらくして永住権カードも来たのですから、
中間を介さず直接役所に出向いた効果があったケースです。

さて今回の出来事です。
先日、一旗会USAの211回会合が終わり、
仲間5人と一緒にラーメン屋で食事して、
その後日本人村の様子を見るためジャパニーズビレッジに入りました。

すると、ある回転寿司レストランの窓ガラスに、
酒類販売ライセンス停止処分の大きなABCのポスターが。

しかし、それ以上に驚いたのは、
その大きなポスターの下に貼り付けられたお店が出した案内でした。

「酒類はご自分で持ち込んでください。決してコルクフィーは請求しません」
という案内です。

すでになんらかの規則違反現行犯逮捕があり、
ライセンスは停止されてしまったようですが、
その余韻がまだ続いている最中に、新たな違反を堂々とするつもりで、
これにはビックリ。
さっそく扉を開け、中にいるレストランオーナーに声をかけました。

もう営業は終わったあとで、
奥さんが一人でイスに座って休んでいました。

「奥さん、このサインはまずいですよ。
これはすぐはずさないとまたABC違反でとっ捕まりますよ」と。
(※ABC=California Department of Alcoholic Beverage Control)

その直後、表のサインを見直していると中から旦那が出てきました。
「商売の邪魔をしないでください」が第一声でした。

「お宅はすでにライセンスを停止されているので、
アルコール類を取り扱う資格はないはずです。
にもかかわらず店内でアルコールを飲ませようとしています。
それは規則違反ですよ。
今だったらまだ見つかっていないようですから、
早くあのサインをはずしたほうがいいですよ」と私。

彼は「違反だという証拠を見せろ」と迫ってきました。
「確認したければ、今すぐおたく自身が
インターネットで調べられますよ」と私。

「金を出すからそれを持ってこい、
そうしたら検討するから」と彼。

どうやら感情が先に立ち、
処分を受けたいらいらから私にあたったようです。
いやはや親切心がとんでもない方向に動き出してしまいました。

私は昔似たケースに遭遇し、
その店は潰れてしまいましたので、
危惧しての行動です。

(※法的根拠を知りたい方は、
California Business and Professions Code 23300, 23301, 23399,
125604をご覧ください)

こちらではBYOBといって、
ライセンスを持っている店で
アルコール類の持ち込みを認めるところがあります。

彼らは持ち込みによって店が売り損なった分を
栓抜き費用という形で請求することで持ち込みを認めます。

このサービスは、
レストランがライセンスを持っていることを前提としており、
食事にあたり年代物のワインなどを持ち込み
食事を楽しもうとする人へのサービスです。
なぜならすべてのワインを店で用意することなどできないからです。

かといって、店はワインを売り損ないますので、
無条件に放置すれば店の営業に影響します。

だから栓抜き料ということで、ワイン販売代金に相当する料金を請求し、
お客もそれを承知の上で持ち込みます。

BYOBは「Bring Your Own Bottle」または
「Bring Your Own Booze」を略した言葉で、
日本食レストランは日本のビールしか置いていないからと
アメリカのビールを持ち込むことも、
お店が認めれば持ち込み可能です。

しかし、ビールのごとく安い商品では
あまり高い料金を請求できないので、
通常は外部からの食べ物・アルコール類・ドリンクの持ち込みは
禁止しているのが実情です。

カリフォルニア州のレストランでアルコール類の販売をするためには、
ビア・ワインライセンスかハードリカーのライセンスを
取得しなければいけません。

通常の日本食レストランはビア・ワインライセンスで営業します。
それがあるからアルコール類を卸で買い、在庫し、販売し、
店内で飲ませることができます。

しかし、そのライセンスは特典という位置づけで、
ライセンスをとったから何をしても構わないという権利ではありません。

約束通り、つまりABCの規則通り
アルコール販売をする限りにおいて認められる資格で、
未成年者や酔っぱらいに販売したり、酔っ払うほど飲ませると、
規則違反で特典を停止されたり剥奪されたりすることになります。
店内飲食が建前ですので、持ち帰りは認められません。

違反行動に関しては、通常はお客の通報で役所が動き出します。
役人がライセンス保持者を一日中チェックして歩くわけではなく、
通報により動くのが普通です。

通報を放置すれば、国民のサーバントである役人は
職務怠慢で責任を追及されますので、
通報があれば必ず出動することになります。

今回このレストランは何らかの理由でお客から役所に通報され、
役所が私服で客を装って入店し、
通報通りのことが起きたため、現場を目撃され、
そのために処分されたようです。

しかし、今回はここで終わらず、
ここから次のトラブル活動に入ったようです。
彼らはライセンスを停止されたので、
お客様にアルコール類を販売することはできません。

ですからお寿司を召し上がりながら
アルコール類をお飲みになりたい方はご自分でお持ちください、
場所使用料などは一切チャージしませんという発想で、
そういったBYOBのサインを店頭に張り出したのです。

停止処分を受けたわけですから、
ライセンスを所有していないことになります。
ちょうど車の免停と同じで、
運転する特典を停止された状態になります。

ライセンスを持たないで店内でアルコールを飲ませる行為は、
飲み手は公衆の場でアルコール飲酒を禁止する法律に違反し、
店はライセンスがないにもかかわらず
アルコールを飲ませたということになります。

自分の場所であっても、
誰もが出入りできる公衆の場(お店)を提供し飲ませているのですから、
違反行為です。

つまり、アルコール類を扱うライセンス所得者のみにに与えられた特典を、
ライセンスはないがお金をもらわないという理由だけで
正当化することはできないのです。

もし、お店が持ち込み自由というサインを出して、
お客がアルコール持ち込みそこで飲んだとして、それが通報され、
その客が公共の場でアルコールを飲んだということでチケットを切られれば、
そのお客は店がOKと言ったから持ちこんで飲んだのであり、
当然お客は店を訴えます。次のトラブルが発生です。

そして、そういう事実が記録に残ると
ライアビリティ保険の掛け金がぐっと上がることになります。
またまたトラブルです。

つまり、処罰や金銭的負担で店が立ち行かなくなれば、
その分、日本人の働く場所が一つ減ることになります。
だから、大ごとであり、私は声をかけたのです。

なぜ、私がそのような条文の存在を知っていたのか。
以前似たようなケースがあり、
ABCに問い合わせたことがあったからですが、
念には念をいれ今回再度その点を確かめ、
担当者から答えとその答えの根拠になる条文を教えてもらい、
それを彼に渡そうとしたのです。

その後の顛末はどうなったかというと、
たまたま後日、日本人街の近くによる用があったので、
その店に規則のコピーを届けにいきました。

オーナーは不在でしたが、
先日見た店のBYOBサインははがされていました。
ホッとした瞬間でした。

後日談。
相談したABC担当官から、
「その店はラッキーでしたね。あなたに感謝すべきですよ。
なぜなら私たちは営業停止処分を受けている最中に
その店に抜き打ち検査を実施し、
処分が順守されているかをチェックします。
もし、その人が持ち込みを推奨しているのを担当者に目撃されたら、
今度の処罰は重たく大変なことになっていたでしょうね」と言われました。
私の危惧が一人の方のお役に立ったケースでした。

わからないことといっても、ビジネス的事項に関しては、
私は行動を通じて答えはつかめると思いますが、
こと役所の手続き的なもの、規則的なことは、
やはり確認をとってから行動することをおすすめします。

情報過多の時代、何が自分にとっての正解かは難しい問題です。
市が違えば法律が違う。
ですから、必ず自分の市の法律を確認してください。

直接役所に出かけなくても、
ウェブサイトを通して役所とは簡単に連絡ができ、
質問にはすぐ答えてくれますので、ぜひ利用してください。

アメリカのウェブサイトでは、必ずどんなことでも
その会社と直接連絡が取れるように「コンタクト」という項目があり、
誰でもが手軽に直接会社と連絡が取れるようになっています。

同じことを期待して日本企業のサイトを眺めると、
そのように気軽に連絡できる体制がなく、
日米企業の消費者に対する意識の差にビックリすることがあります。

わからないことがあったら、直接連絡して確認を取る、
ぜひ実行してみてください。
たったそれだけのことで将来の大きなトラブルを排除できる、
そのことをぜひお忘れなく。

(メルマガ『アメリカ発!「スモールビジネス」成功のセオリー』2015年7月6日発行 Vol.781より)