ビジネス経営とは心づもリの持ち方の問題

あなたは経営者としての心づもリをお持ちですか。
それは心構えとは異なりますので、そのつもりで。

経営という仕事は、やさしい仕事ではありません。
なぜなら取り組むテーマがあまりにも多岐に渡るからです。

たとえば、一つがうまくいっても
それにいつまでもこだわると
ビジネス失速の原因にもなってしまいます。

だから、経営者としての心づもりができていないと、
個々のテーマの処置にいちいち苦慮することになります。

では、その心づもリとは何でしょうか。

全体像を押さえ、
その上で個々に対応していく姿勢が必要です。
それが心づもりになります。

早い話、諸行無常に対応しながら、
かつビジネスの存続と成長を実現していく仕事です。

たとえば、カリフォルニア州では、
2016年1月元旦から最低賃金が10ドルになることが決まっています。
すでに上がることが決まっているので、
今からそのときの準備が必要です。

人間は心づもリがあると、それなりに対応できるものです。
それがないと毎回あわてたりうろたえたりして、
その対応に苦慮することになります。

英語では”mindset”と言いますが、
「○○は当然そういうことになる」という心づもりをもてば、
できごとは突然のことではなく、
あらかじめ予定した通りの動きになり、
うまく対応できるばかりか、
その動きを見越して先に手を打つことも可能になります。
経営とはそういうものです。

問題はその心づもりの内容になります。
経営における一般的な心づもりとしては、
●変化は当然
●競争は当然
●ロイヤリティープログラムは当然
●スピードは当然
●柔軟性は当然
●IT化は当然
●モバイル化は当然
●弱肉強食は当然
●トラブルは必ず発生する
●社員は自分の思い通りには動かない
●すべての人を満足させることはできない
●ビジネスにアップとダウンはつきもの
●稼ぐに追いつく貧乏なし
●経営とは選択肢を持ち、決断すること
●お金の問題に見えることは実はお金とはまったく関係のない問題

では、そのような心づもリは
どのような方法により手に入れることができるのでしょうか。
●観察
●経験
●学び
●助言

以上のうち、学びについてもう少しつっこんで見てみましょう。
例をフランチャイズビジネスにとってみます。

フランチャイジーがフランチャイズビジネスを
フランチャイザーから買うとき、契約書がかわされます。

フランチャイジーは、経営指導、仕入れ、プロモーション、
ブランドなどの特典を得るかわりに、
契約料を払うほか、売上に対してロイヤリティーを払うことを約束します。

ここで学ぶべきは、フランチャイザーとフランチャイジーでは
収益構造が違うということです。

たとえば、フランチャイザーが近くにもう1軒
別のフランチャイジーを開けたとすると、
フランチャイザーは売上、つまりロイヤリティーが増えますが、
フランチャイジー既存店は売上が減少する可能性があります。

実際に起きてから問題になるのではなく、
契約時にすでに問題が発生しているのです。

だから、フランチャイジーはそれなりの心づもリを持って
準備しておく必要があります。

もし、フランチャイザーが深夜営業を開始して、
それを全フランチャイジーに要求したとします。

するとフランチャイジーは
収益性の悪いビジネスを展開せざるをえません。
時間あたりの収益性が悪くなるからです。

しかし、全売上に対してロイヤリティーを課すフランチャイザーは、
売上、利益を伸ばすことになります。

これは実際に起きてからではなく、
契約の段階ですでにはっきりしていることです。

つまり、約束した段階で
そのようなことが起きることを心づもりしていれば、
それなりの準備ができることになります。
それが学びです。

実際にはこういった問題が発生して、
フランチャイジーがフランチャイザーを訴えるケースが発生しています。

心づもリが成功をもたらしたというケースが最近ありました。
最近、ある鶏専門フランチャイザーが、
従来鶏フランチャイザーのトップだったKFCの売上を抜き
トップに躍り出ました。
しかも、フランチャイジー数は約半分以下にもかかわらずです。

1店舗あたりの売上がKFCの約3倍強に伸びたのが成功の秘訣です。
しかも、土曜日は休みという事実にも関わらずです。

これは、フランチャイザーがその契約書に、
フランチャイジーは専業フランチャイジーでなければならない、
一定期間に3軒店を持つことに同意するという一項を設け、
おかげでフランチャイジーがそういった心づもリで
ビジネスに取り組んだからになります。

また、健康志向、医療費の高騰といった
揚げ物回避という時代になったのを見極め、
それなりのメニューを提供したのが
市場に歓迎された理由のようです。

日本人は契約書を精読する習慣をもたないうえ、
自己の利益を守るために弁護士を雇い
その助言を得るといった習慣がないため、
契約書を読まずに簡単にサインして、
あとで泣く羽目に陥ることが多いようで、気をつけたいものです。

これはビジネス契約書にかぎらず、
賃貸契約、離婚、各種公的規則など、
多くの分野で起きている悲劇です。

さて、何らかの方法で心づもリを持てると、
当然それに対する対策も考えるようになり、
もし、それらが発生したらではなく、
発生するのは当たり前、問題はいつ発生するか、
だから、それなりに事態を見極める習慣がつきます。

そして、対策を立てたら、
あとは実行あるのみ、ということになります。

対策を立てるためには、
顧客や市場の動きの側にいることが重要で、
彼らの動きが始まった場合、
いつ行動に移るかの見極めが重要になります。

つまり、市場対応がうまくいくのは、
あらかじめそれなりの心づもりがあるから、
そういうことです。

あなたの経営は、自分の業界、市場の当然の動きを
心づもリした上での活動でしょうか。

もし、あなたがビジネスの現場に、
従来とは異なる心づもりを持ち込むと、
あなたの考え方にはいったい何が起きるでしょうか。

セールスはセールスする前から始まる。
固定客とは去っていく存在。

固定費とは不要な費用。
費用を投資と考えよう。
するとかける価値がある費用かすぐに判断できる。

市場占有率とは宣伝会社やコンサルタントのたわけごと。
ブランドや品質、知名度は、ビジネスの推進力にならない。

ビジネスのローケーション選びは
ビジネスの盛衰とはまったく関係がない。
資金力はビジネスの成否にはまったく関係がない。

明日のできごとに対して経験者はいない。
コストアップと収益性は関係ない。

トラブルは成長の原因。
いくら選別してもダメな社員を雇ってしまうもの。

トップの考えが末端に浸透することはない。
社員は辞めていくもの。

いくら資金があっても資金不足は発生する。
資金がないからうまくいく。

売れ筋商品は売れなくなる商品。
うまくいっている場に固執するとつぶれる。

時代の流れに合わせる必要はない。
先が今を生み出すのではない。
今が先を生み出す。

チャンスにだまされない。
あなたにとっての本当のチャンスは一つ。
失敗を恐れず実際に失敗しよう。
するとうまくいくようになる。

流動的な経営という仕事に、
絶対、また、これだという理論、手法はない。
残りものに福あり。
隙間商法が突破口を作り出す。

すべて独創である必要はない。
模倣、二番手経営もまた、一つのやり方。
寄生虫ビジネス、コバンザメ商法もまた、一つのやり方。

競合他社がつぶれた。自分も心配。
とんでもない、チャンスが増えた、バンザイ。
などなど……。

以上を当たり前と考えると、
どんな難問も実はチャンスへの突破口であることが意識できるはずです。
これが心づもりになります。

心づもリがあれば余裕を持って対応でき、
それなりの準備ができるからです。

いつ何どき何があってもびくともしない、
そういった余裕のある経営、
それが大きなチャンスをつかみとるのです。

さて、いちいち登場する問題ごとに反応してしまうあなた。
実はそれは不要の対応では?
それと、何も起きてはいないが
すぐ問題になりそうなことがすでに表面下で起きているのでは?

心づもりを持たないあなた、
あなたは自分の行動が気になりませんか。

(メルマガ『アメリカ発!「スモールビジネス」成功のセオリー』2015年5月18日発行 Vol.774より)