切り捨てる、その勇気が経営者には必要

決断時の躊躇、
それは切り捨てることができないからです。

あれも重要これも重要、
これではどれに力を入れるべきか決めかねます。
本当に必要なこと以外は切り捨てる、
そういう勇気が必要です。

切り捨てることができないと何が起きるか。
それを引きずったままの従来を踏襲したやり方になり、
従来と同じ結果しか得られない
将来性のない経営に陥ってしまうことになります。

この切り捨てるとは、
単に取捨選択、プライオリティー決定以外、
一つの成功したやり方、それに固執しない姿勢も含めたものです。
なぜなら、そういう姿勢は変化に対応できなくなりやすいからです。

世の中はどんどん変化しています。
ITの進歩、科学の革新、気候変化、異文化の流入、移民の流入、
意識的に過去を修正しようとする動きなどの影響が働くからです。

そのような世の中で経営者に求められる資質とは?

それが、切り捨てる勇気です。
変化する世の中にあって、過去にしがみつかない、
過去にとらわれない柔軟性に満ちた自分を形成し、
それにより必要なことにのみに力を集中して、
ビジネスが達成したいことを確実に達成していくために
必要不可欠だからです。

過去の知識、過去のやり方、過去の体験、過去の取引関係、
過去の人間関係、それらにとらわれると、
新しい変化を吸収する力や対応する力が生まれず、
結果として、時代にそぐわない誤った経営判断を下してしまい、
ビジネスを崩壊に導く恐れがあります。

この切り捨てる姿勢は、
「売れ筋商品」「動いている市場」「忙しい時期」
「上得意」「成長力」という言葉に代表されるように、
足を引っ張っている売れない商品の整理、
採算の悪い市場からの撤退、
忙しい時期を拡大させる工夫、
採算の悪いビジネスを整理するほか、
誰でも彼でもをお客にする姿勢から
自分のビジネスが対象とする人にアプローチ、
その人を固定客化する工夫、
そして、自分のビジネスの推進力は何かを見極める力を
促進することになります。

切り捨てるという行為は、白黒のはっきりした行動で、
希望結果はすぐでないわりに、
切り捨てたことにより発生する否定的結果だけはすぐ目視できるため、
非難や攻撃を受けやすく、おかげで、多くの方が躊躇しがちです。

しかし、経営者はすべきこをしていかなければなりません。
ビジネス経営とは、現実との戦いであり、死活問題なのです。
切り捨てることを躊躇すれば、
自分がビジネス社会から切り捨てられるのです。

経営者は日常的に競争を意識して活動し
ビジネス、商品、サービスの個性化、差別化を図り、
選択肢を持って物事を判断し、
常に最優先事項を判断し、
オペレーションにおいては常に最適化を考え、
バランスのとれた考え方を持ち、
知識、知恵、センスを磨き、
その都度ゴールを達成しながら
年々の成長を実現していかなければなりません。

だから成長飛躍を実現するためには、
従来のやり方を「切り捨てる勇気」が必要不可欠になります。

切り捨てるとは、思い込みであり、思いきりであり、
集中であり、頭の整理になります。

早い話、絶対不可欠な一点に集中し、
それ以外をすべて切り捨てる勇気です。
切り捨てたなら、切り捨てたものに後ろ髪を惹かれることなく、
前進する一徹さが必要です。

経営判断は、決めた以上貫徹する勇気を伴うものであり、
決して必要ならいつでも修正すればいいのレベルではありません。
そのように中途半端なレベルの決断だと、
結局はあれもこれもと目がとらわれ、
虻蜂取らずになるのが落ちだからです。

切り捨てるとは、そのように徹底した意識での行動です。
場合によっては前進だけではなく、
うまくいっている最中撤退する勇気も必要です。
それができないとビジネス自身の崩壊を早めることになります。

このほか、切り捨てるとは、
従来のうまく行ったやり方を切り捨てる勇気も含みます。

私たちは過去の成功体験をついいつまでも引きずってしまい、
気がついたらいつの間にか市場とは遊離した存在に
なってしまうことがあります。

成功体験にだまされないためにも、
必ず自分を定期的に見直し、
必要とあらば、その成功体験を切り捨て、
自分を変革していく必要があります。

その逆に、過去の失敗経験をいつまでも引きずるのは止め、
過去の失敗は過去のものとして切り捨て、
自分を変革していく勇気が必要です。

切り捨てると言えば、
取引相手のことがすぐ思い浮かびますが、
アメリカではこのあたりはすこぶるビジネス的で、
取引相手に情実でいつまでも、ということはありません。

取引目的に応じて相手を代えることは日常茶飯事で、
相手側もそれを承知しており、
彼らもそれなりの対応を用意しているのが現実です。

今回は、ビジネスの現場における
切り捨てについて考えてみましょう。

成長を実現するためには切り捨てが不可欠です。
なぜなら従来を引きずったままでは従来どりの結果しか生まれず、
成長を実現できないからです。

まずは従来の考え方、やり方を切り捨てる、
そこからこそ突破口を切り開くことができます。

たとえば、新しい価値の創造、収益性の拡大、市場の拡大、集客力は、
従来の発想からは生まれてきません。

従来と同じ発想から生まれるのは、
従来と同じレベルの結果でしかないのです。
だから、従来を切り捨てるところから成長が可能になります。

しかし、一口に従来を切り捨てるといっても、
ビジネスを存続させ、そこそこうまくいっている発想、やり方ですので、
それを捨てることには不安がつきまといます。

通常、ダメなものをいつまでも引きずっている場合、必要な決断ですが、
ここで言う切り捨てるとは、もう一歩踏み込んだ勇気になります。

ダメになってからではなく、
調子がよいときに切り捨てる勇気です。
だから、難しい決断になり、勇気を必要とすることになります。

勢いがあるときに前進することは誰にでもできます。
しかし、勢いがある時点で撤退する、切り捨てる、
これはなかなかできるものではありません。

ここで言う切り捨てるとは、そのような勇気を指します。
その判断が間違っていれば、
ビジネス自身が崩壊する危機を含有する活動だからです。

昔、日本の警備保障会社は、うまくいっている最中、
これからは人海作戦からエレクトロニック化の時代と判断し、
切り替えに入りました。

上手く行っている最中、
そんなことなどしなくてもという社内の意見をよそに、
創業者は思いきった転換を実行、
そして、さらなる飛躍を果たしました。

すべてがうまくいっているとき、それを捨て、
新たな分野に切り替えることは相当勇気を必要とする決断です。
しかし、成長、飛躍なくして将来なしという現実を知れば、
どこかで取り組まなければならない決断です。
まさに経営者の動物的勘、センスが求められます。

そして、それが正解になるのは、
やはり、それなりに自分のビジネスの成長を考えているからです。
のめり込みが強ければ強いほど、
コミット度合いが違ってくるのです。

自分の商品、サービスへの付加価値の増大、
プロモートする集客ではなく、人が求めるがゆえに起きる集客、
価格競争に無関係に成り立つ高価格、高利幅、
儲けるやり方ではなく、儲かる体制、システムの確立、
あなたの商品、サービスをを求める市場の組織化など
これらは達成するためには
「今を切り捨て」なければできない仕事です。

しかし、そんなにうまくいくのだろうか。
何もそこまでしなくても、
今のやり方でも十分利益を出せるのに……。

切り捨てるとは、そういう今に固執する考え方を根底から否定する発想。
だから、勇気が必要なのです。

なぜそこまでするのか、
それに対する答えがあればこそ取り組めるテーマです。

さて、あなたは自分のビジネスをどう展開したいのでしょうか。
あなたのビジネスのビジョンとは、どのようなものでしょうか。

それらに対する答えは、
今のやり方、今のビジネスレベルで達成できるのでしょうか。

気になりませんか、あなた。

(メルマガ『アメリカ発!「スモールビジネス」成功のセオリー』2015年5月25日発行 Vol.775より)