ビジネスに長年携わっていると、
複雑な事象を簡単に把握することの重要性に気づきます。

一見複雑、しかし、実際は実にシンプル、
そう看破するだけの力を養いたいものです。

カリフォルニア州のスモールクレイムコート
(少額訴訟裁判所、1万ドル以下の金額訴訟受付裁判所)の
やりとりを見ていると、
訴えた側も訴えられた側も自分サイドの主張を強調しますので、
事件は相当複雑に見えます。

しかし、裁判官はどちらの主張が本当か、
法律に照らして妥当性があるかと、
争点と事実を簡単に見極めています。

一般の民事裁判においては、弁護士が代理人を務め、
両当事者の弁護士は自己の主張を有利にするため、
事態を複雑化させます。

しかし、裁判官は事態を冷静に見極め判決を下していきます。
争点を見極め、どの条文を適用すべきかを明確化できるからです。

このように、複雑に見える事態も、
実のところ実に簡単な出来事、それを理解できれば、
そういう視点で事態に対応できるといえます、

事態を難しく考えると、どんどん深みにはまり、
ますますわからなくなる、それが現実です。

そのため、いろいろと助言を求めだし、
肝心要のビジネスへの取り組みの手を休めるため、
事態はますます悪化していきます。

物事は簡単に、
そういう習慣をつけてください。

ビジネス展開は理論ではありません。
人の動きも理論ではありません。

景気の動き、国際化の進行、業界の変化、
それらを科学的に定量化、定型化して、
方式化、理論化しようとするのは学者やコンサルタントの仕事で、
あなたの取り組んでいる市場とはまったく関係のない話。
実務には関係ない人々だからできる仕事になります。

あなたはビジネスの実務家です。
決してそのような実際とかけ離れてしまう話に
惑わされないようにしてください。

難しく書いていることは、
偉いわけでも正しいわけでも
盲信する理由にもなりませんので、念のため。

オンラインで見かける経営記事、セールス記事には、
笑い出したくなる記事がたくさんあります。

実務とはあまりにもかけ離れており、
論理の遊びに酔っているものが多いからです。

エンタテインメント読み物としては面白いでしょうが、
それをまじめに信じると被害者が出るだろうなと思わせる記事は
無視するだけのセンスがほしいものです。

理論や論理の欠点は、その一貫性を保つため、
それに合致しない事実を避けてしまう点にあります。
実務とはすべての矛盾にも対応していく仕事なのです。

なぜビジネスが低迷しているか、
なぜ固定客が去りはじめているのか、
なぜ生産性が落ちているのか、
なぜ競合会社に市場をくわれているのか、
なぜ見込み客が顧客にならないか、
といったテーマの記事や話になると、
つい自分は間違いを犯しているのではと気になるものです。

そして、彼らの話がもっともな話のような気がしてきます。
迷いが出たときは、そのようなものです。
ちょうど占い師の話がもっともに思える状態で
占い師に駆け込む状況と似ています。

迷いのあるときは、ぜひ基本に立ち戻ってください。
するとすべきことがはっきりします。

基本となる考え方とは、
第1に、ビジネスは常にうまくいくわけではない、
低迷もビジネス展開の当然の一部、そう考え、
すべきことを継続すればいいだけだという考え方です。

嵐が過ぎれば静かな日がやってきます。
一時的変動におたおたすると問題になります。
もっと腰を落ち着けて取り組みたいものです。

固定客とは去っていくものです。
いつまでも自分のお客としてとどまると
仮定してしまうことはばかげています。

早い話、残っている固定客と去った固定客を比べ、
残っている固定客が比較にならないほど多ければ
心配などする必要はないのです。

万人を喜ばすことは誰にもできません。
神様であってもすべてを信者にすることができないのと同じ現実です。

機械は老朽化すれば生産性が落ちます。
セールスマンは人間ですので疲れも出ます。
感情のムラも出ます。
季節的市場の変動はコントロール不可です。
だからいつまでも同じレベルの生産性を期待することが間違いです。

要はその事実を認識して、その生産性ダウンの原因に手を打ち、
一定の生産性を維持するために手を打てばいいだけの話です。
それを怠ると生産性ダウンに泣くことになります。

相手があるビジネス展開では、
顧客も競争相手も自分の利益だけを考えて行動します。
あなたの利益のために行動しているわけではありません。だから、ついたり離れたりは当たり前の行動です。

競争相手も皆必死ですから、
あなたの市場が一部食われることも当然です。
あなただって彼らの市場を食い荒らしているのです。

要は、あなたのビジネスは、自分が約束したことを
信頼している人相手に継続して提供しているか、
それだけが勝負です。

それを忘れた行動は、結果を出さないのみか、
問題をますます悪化させるだけの話です。

見込み客が自動的に顧客になる、
そんな便利な世の中なら、すべてのビジネスはうまくいきます。

また、競争相手がそれを利用すれば、
あなたのビジネスは簡単に破滅してしまいます。

そうならないのは、
見込み客がすべて顧客になるということがないからです。
当たり前のことです。

満足充足度で顧客を測定し、
その度合いに応じて対応を考えることなど、
一見論理的に見えますが、
これほど非現実的で、顧客を愚弄した姿勢はありません。

要は、そういう見込み客にあなたのビジネスの刺激を与え、約束をし、
それを充足することにより
自分の顧客になってもらう行動をとっているかになります。

このように、問題と思えることは、
実は簡単な真理で解決できることばかりです。

それを忘れるから、うろたえ、途方にくれ、
意味のない知識にだまされることになるのです。

要は、あなたのビジネスが約束したこと、
市場が期待していることを、あなたが間違いなく提供して、
彼らの信頼をキープできているか、
それをチェックすればいいだけの話です。

つまり、基本の考え方の第2は、
自分のビジネスは市場に約束したことを忠実に実行し、
彼らとの約束を守ることにより信頼を勝ち得ているかになります。

こういう視点でいろいろな経営記事を見ていると、
本当に実務経験者か、
それとも頭でビジネスを考えている人かがすぐにわかります。

経営者は必要なことにのみ取り組み、
無駄なことにはエネルギーと時間、お金を割かないようにしましょう。

今回は、ビジネス展開とはどういうことか、
そのあたりをもう一度基本に立ち返って眺めてみましょう。

人はみな違います。
人は皆自分の都合で動きます。
そういう人を相手に仕事をするのがビジネスです。

お金は誰にとっても重要です。
働いて稼いだお金ですので、使い方には慎重になります。
人はお金を出す価値のあることに、価値に値するだけ出します。

いろいろな選択肢があるのが自由競争社会です。
だから、自分なりに選択した相手と取引します。
その信頼に応えるビジネスと思い、期待して取引するのです。

良い体験は皆に話したいものです。
得をした気分になります。
そういう人が増えると、ビジネスは成長します。

顧客は数ある顧客の一人ということを知っています。
だからといって、自分の存在を否定しているわけではありません。
たまには自分のほうにも目を向けてもらいたいものです。

選択肢が多い場合、
選択する側にとってはどう選択すべきか迷うものです。
そのとき、類似ビジネスと自分はこう違いますと
教えてくれると助かります。
すると利用の仕方がはっきりするからです。

ビジネスは社会的存在です。
何を目的に頑張っているビジネスなのか、そのあたりが明確だと、
応援のしがいがあります。

なぜなら、人にはそれぞれしたいこと、
参加したいことがあるからです。

私はあなたのビジネスのファンです。
だから、応援しがいのある行動をとってください。
おかげでファンとして自慢できます。

取引において常に満足するとは期待はしていません。
しかし、何かがあった場合、誠実に対応してくれる、
そう信じています。
私のこの考え方、間違ってはいませんよね。

お客、見込み客、市場は、
そのような見方であなたのビジネスを見ているのです。

その視点に応える姿勢を失ったとき、
トラブルが発生することになります。

どういう考え方、やり方をしないからではなく、
すべきことをしていないから、今の問題に巻き込まれている、
問題は実に簡単なのです。

理論や方程式ではなく、実際にすべきことをしていない、
それが問題なのです。

さて、最近調子が悪いからとあせっているあなた。
あなたは不要な心配に忙しく、
すべきことをせず、手抜き仕事をしていませんか。

物事は本質を押さえると実に簡単、
つまらない説、論理、考えに惑わされず、
すべきことに邁進してください。

すると、また、あなたの願い通りの
結果が発生するようになるはずです。

最後にもう一度強調しておきます。
物事を難しくすることは誰にもできます。
簡単にすることは誰にでもできることではありません。

さて、あなた、
あなたはどちらのグループでしょうか。

(メルマガ『アメリカ発!「スモールビジネス」成功のセオリー』2015年4月13日発行 Vol.771より)