机上の空論、それではダメ。 もっと足元を見つめた動きを

大きな夢や理想を抱くことは素晴らしいことです。
問題はそれらに対してどういう姿勢で取り組むかで、
取り組み姿勢のない夢や理想、
実現行動を伴わない夢や理想は戯言で、
言葉だけの達成方法は机上の空論になります。

また、うまくいきだしたときほど、
足元をしっかり固めるようにしてください。
それを忘れると砂上の楼閣になり、
ちょっとしたはずみで一気に崩れるものです。

ところで、ここでいう理論とは、
経営書が説く各種経営理論以外、
私はこうして儲けた、これが成功する秘訣のたぐいを指します。

成功談は一つのアイデア、ヒントにはなりますが、
人が違い、時代が違い、環境が違い、状況が違いますので、
そのやり方を無条件に信奉し、
それを闇雲に踏襲するのは危険な考え方です。

自分なりにそのような考え方をよく咀嚼し、
自分に合わせたやり方で実地に試してこそ、
活かし方があります。

机上の空論とは、実際的ではなく、
頭だけの発想、理論ばかりに走る対応姿勢で、
こうすればこうなる、という考え方が、正解と信じるやり方です。

この弱点は、刻々変化する状況に対応できないことにあります。
そもそも理論は一定の条件を前提としており、
その前提がどんどん変化している場合、
成り立たない考え方になるからです。

また、机上の空論の弱点は、
具体的検証行動を伴っていない点にあります。

理論とは一つの仮定であり、
その仮定の正しさを証明するために、実験、
つまり、検証作業が必要です。

そして、その実験で理論の正しさが証明されたとしても、
その実験は一定の条件下でのものであり、
その条件が変われば、うまくいかないことが出てくる可能性も
頭の中に入れておく必要があります。

机上の空論は、多くの場合、希望であったり、推測であったり、
非合理的平均値抽出方法による憶測であり、
そういうものに依存する考え方は実際的ではありません。
現実の状況を無視しての判断は、判断とは言えない代物です。

たとえば、武道では一定の動き、やり方の中で訓練します。
つまり、条件が決まっているので、
それにどう対応すべきかの訓練になります。

しかし、もし、その条件がまったく異なる戦いに挑めば
何が起きるでしょうか。

つい最近、古武道の達人(60歳)と言われる人が、
総合格闘技試合に出場し、15秒でノックアウトされました。

同じようなケースで、合気道の達人(65歳)と言われる人が
自分と戦う人を募集し、
それに応じてチャレンジしてきた総合格闘技の人に、
簡単にノックアウト負けをしました。
実践と道場武道では大きな違いがあるようです。

条件、環境が違うのに、従来と同じ動きしかしない、
まさに机上の空論で、
これでは戦う前から結果ははっきりしています。

ビジネス社会は、
実際に対応しなければどうすることもできない場で、
行動を通じて事態を乗り越えていく活動、
展開条件がドンドン変化する条件での展開です。
つまり、机上の空論が通るほど甘い場ではありません。

また、行動を通じて失敗すれば、うまくいく方法を模索しだし、
うまくいけばやる気が生まれ、力も育っていくものですが、
机上の空論にはそういう過程がないため、
やる気も力の育成もないことになります。

理論に合わないことはしない、
しなければ学びもない、
上達に不可欠な知恵や力の育成チャンスもない、
おかげで実際とはどんどんかけ離れてしまい、
現実的対応でなくなってしまうことになります。

では、ビジネスの場に見られる
机上の空論にはどのようなものがあるでしょうか。

この市場規模は○○兆円、そのわずか1%でも○○億円の売上が可能……。
初年度の売上は○○億円、次年度は○○億円、
そして3年目に○○億円を達成する……。
○○万円の資金がなければ起業は無理……。
資金がなければ成長は無理……。
他人ができたことだから自分がやってもできるはず……。

もし、あなたが投資家ならば、
投資して儲けさせてくれるのか、
本当に儲けることができるのか、といった視点で話を聞くでしょう。

もし、あなたが融資家ならば、
本当に元本揃えて返してくれるのか、
きちんと約束通り返してくれるのか、気になるはずです。

アイデアだけで、実際には何も具体的実行行動に移っていない、
大きな夢にもかかわらず、現実の結果はあまりにもかけ離れた結果。

机上の空論の弱点は、このように、
現実に対してどのような結果を
発生させることができるかを検証していないため、
投資家や融資家への説得力に欠けることです。

私は、過去相当貸付や掛売で失敗しましたが、
つい気の毒になって、という、
ビジネスマンとしては話にならないお粗末な理由で
失敗を繰り返してしまいました。

彼らに共通していたのは、
絶対にお返ししますとか、
絶対儲けさせますからといった根拠のない思いだけ、
また、平均してこのくらいの利益があがりますから、といった発想、
その商品と市場を結びつける具体的行動がなく、
想像だけのマーケティング、
持ってきた計画書の数字は辻褄合わせのもの、と、
どれをとっても現実離れしていたことです。

それからもうひとつ気づいたのは、
彼らに簡単にお金を渡してしまっため、
彼らが必死になってお金をつくりあげる気持ちを
そいでしまったのかもしれないということです。

知恵や汗を流すからこそはじめてつかめる
金作りの力を奪ってしまった、
それが渡したお金を回収できなかった理由のような気がします。

その意味で、今までの実績をチェックせず、
気の毒だというだけの理由で相手に要求に乗ってしまった私には、
甘さがあったとしかいえません。

また、ビジネスマンは数字でビジネスを捉える習慣が不可欠です。
しかし、その数字がとってつけただけの数字では、
まったく意味がありません。
実際を反映していない数字には意味がありません。

ビジネスでは、実体を伴わない話には耳を傾けません。
実体をつくりだそうという行動を伴わない話には興味がありません。
つまり、アイデアだけの話には耳を傾けません。

では、夢や希望を持ち、起業したい人で、
資金がない人、新たなことにチャレンジしたい人は
どうしたらいいのでしょうか。

どうしたら投資家や融資家を
説得できるようになるのでしょうか。

この問いかけに対するヒントを得たい方には、
YouTubeの「Shark Tank」という番組を見ることをおすすめします。

どういう人・ビジネスが、具体的投資を受けたのか、
断られた人・ビジネスは、なぜ断られたのか、
どういう条件を付けられたから、投資してもらえたのか、
どういう人が、自分の希望以上の投資金を引き出したのか、
そして、具体的に投資を受けたビジネスはその後どうなったのか、
とても参考になります。

この番組登場者は、まず書類審査に受かった人たちばかりで
(18歳以上、合法的US滞在者、刑事犯罪歴なし、自分の経歴を任意に提出等)
投資家に会うのは収録のこの日がはじめて、
投資家には事前に登場者に関する資料説明がないまま本番、
収録段階ではかなりきつい質問攻めの1時間のようで、
テレビで放映されるのは、
その収録を1人当たり10分に編集したものです。

では、書類審査の段階では、どのような質問をされるのでしょうか。
そういう質問に対して明確に答えられることが、
起業家、現役経営者には不可欠ということになります。

もし、それらに対して、
明確な答え、情熱を持った姿勢で挑めないようでは、
資金の引き出しは無理ということがわかります。
さて、あなたの場合はいかがでしょうか。

(以下「Shark Tank」の質問から抜粋)
1. 学歴は。
2. ビジネスや商品の説明をより詳細に。
3. いくらの投資金額が必要か、
それに対していくらの株式を譲渡するつもりか。
4. 投資したお金をどう使うつもりか。
5. 以前どこかで資金調達をしたことがあるか。
もし、あるとすればその詳細を。
6. ビジネスを軌道にのせるために何をしたか。それに成功したか。
7. なぜ自分のビジネスを売り込みたいのか。
8. あなたのビジネスの特徴ある売り込みポイントは。
何であなたのビジネスは有名か。
9. あなたがビジネスを成功させた状況について。
10. あなたのビジネスが関与している団体や組織は。
11. あなたは何らかの顕彰を受けたことがあるか。
12. あなたが過去達成した偉大なこととは。
13. あなたが過去体験した最大の後悔とは。

つまり、ビジネスのアイデアに対して融資や投資を引き出す、
また、ビジネス取引を開始するためには、
これらの具体的行動を持っていることが前提になっており、
そういうものがあればこそ、
相手も話に耳を傾けるということがわかります。
そういうものがないのが机上の空論になります。

さて、起業したいが、金がないからと、
資金調達や投資家探しに躍起になっているあなた。
もしかしたら、他にもっとすべきことがあるのではないでしょうか。

成長飛躍のため、資金調達や投資家探しに躍起になっているあなた。
資金調達がまったく不可能という前提をもったとき、
あなただったらいったい何をするのでしょうか。

ビジネスとは結果が発生しないと存続できない存在です。
そして、結果は結果を出すための行動があればこそ可能になります。

行動とは、与えられた状況の中で、
意図する結果を発生させるための活動です。
必ずしもすぐうまくいくわけではありませんが、
そのうまくいかない行動の中から、
必ず次の行動への知恵を学べるものです。

ビジネス環境は、時代の進行とともにどんどん変化し続けます。
競争相手が登場すれば、まさに日々が変化との戦いになります。
だから、行動するとは、結果発生活動という意識のほか、
学びの活動と理解する必要があります。

行動とは、五感を駆使した全力活動です。
だからこそ学びが多く、力も育成されていくものです。

しかし、それを避けてしまうのが机上の空論で、
現実の結果発生はもちろん、
次への準備もできないことになってしまいます。

検証活動を持たない理論、
つまり、具体的に実証されていない理論だけの取り組みは、
命取りになるのです。

スモールビジネス経営者は、行動を通じて大きくなる、
ぜひそれをお忘れなく。

(メルマガ『アメリカ発!「スモールビジネス」成功のセオリー』2015年8月3日発行 Vol.785より)