最近よく聞く言葉に

「採算が合わない」、「割に合わない」があります。
もしかしたらそういう判断尺度だと、
ビジネスはうまくいかないかもしれません。

採算が合わない=金がかかる、
採算が合わない=儲からない、
採算が合わない=苦労したくない、
採算が合わない=面倒くさい、と直結した即断が、
実のところ、ビジネスチャンスを失うことになることが多いものです。

また、コスト管理意識が強すぎると、
出し惜しみ、というより、一切出さない姿勢が始まり、
ビジネスの基本である「前に出る姿勢」が失われます。

もしかしたらあなたも直感的にそう判断して、
せっかくのチャンスをつかみ損なってはいませんか。

採算が合う合わないとは、
まずは投資行為があり、
その投資に見合うだけのリターンが期待できるかの判断になります。

余計なことに金は出したくない、
面倒臭いことには手を付けたくない、
余計な苦労はしたくないといったレベルの判断とは異質な判断です。

また、新たな出費に対してどう考えるかは、
その経営者の判断になります。

赤字経営者、儲かっていない経営者、
キャッシュフローに苦労している経営者は、
自動的に支出には拒否反応を示します。

手持ち現金がないからであり、
限られたお金を使いたくない、
そういう考え方です。

採算が合わないと結論づける人の大方は、
正直なところ、採算を真剣に検討し、損益分岐点をはじき出し、
そこへの到達時間も考えて判断することはありません。

また目前の数字の持つ意味を検討することなく、
提示された数字だけで判断してしまいます。

そうではなく、ビジネスの将来に対する自分なりのビジョン、
その提示案件と他の事実を結びつけたり、
その提示案件の持つ可能性を検討したりする姿勢があれば、
採算うんぬんは即断できないはずです。

私の場合、この言葉は、
レストランに弁当調理の依頼に出かけるとよく返ってきます。

余計な仕事はしたくない、提示価格が安すぎる、儲けが薄すぎる、
そう感覚的に決めてしまうようです。

現実には担当しているレストランがあり、
儲かるからどんどん数量をこなしているのですが、
そういうことを説明しても無駄ですので、
「ああ、そうですか」ですませております。

採算とは合わせる意識を持ち、うまいやり方を使えば
いくらで合わせることのできるもので、
やり方はいろいろあります。

そういう発想がないと、
「採算に合わない」がすぐに口から出てしまうことになります。

たとえば、私の弁当宅配では、
とんでもないところから注文をいただくことがよくあります。

片道1時間で個数は1個とか2個、
わざわざ人にお金を払ってガソリン代を使って
たった1つか2つの弁当をお届け、
一見すると相手にする対象ではありません。
まさに採算が合わないの例です。

しかし、冷静に考えると、
私のところに電話してきたのは、
同業者が採算が悪いからと断った可能性があります。

引き受ければ必ず喜ばれ、
感謝されることが明白です。

実際によくあるのは、
妊娠中で子供の食事や旦那の食事の世話ができないから、
その間届けてくれないか、
自分のビジネスが忙しく一人住まいの親の食事の面倒が見れないから、
一定の期間毎日食事を届けてくれないか、
病気(怪我)のため買い物にも行けず、
立って食事の支度をすることもできないから、
よくなるまで食事を届けてくれないか、
そういったケースです。

お届け先は自宅、介護ホームといろいろです。
お客は困っているのです。
でも、誰も相手にしてくれないのです。

他の依頼された店では採算が合わないと判断し、
断ってしまうようです。

そこで、通常私たちは、半径30分以内の他のお客に、
「○日、そちらのほうにおうかがいしますが、
弁当の御用はございませんか」と連絡を入れます。

すると遠くからの配達に遠慮していたお客が
注文を出してくれることが多く、
その新たな1軒の要望のおかげで、
行っただけの価値のあるビジネスになることになります。

初めてのお客、既存客の両者から喜ばれ、
基盤作りの点が増えたという結果になります。

点が線になり、それが面、
つまり、効率的で利益の出る宅配ルートになるのは時間の問題です。
採算とは合うようにすればいいだけの話、
そういうことになります。

そもそも、儲けるとは、
ビジネスが提供する何かが喜ばれて、
その対価としていただくもので、
儲けるつもりだけで得られるものではありません。

お金を出すのは消費者、
その消費者がお金を出すのは
彼らを納得させる仕事ぶりがあってこそ
初めて可能になります。

つまり、それだけの価値あるものを提供する覚悟と意欲があってこそ、
儲けが可能になるのであり、
提供したから自動的に儲かるというものではありません。

採算とは結果であって、
取り組みのない人にはわからないものです。
サービス業者にとっては実に当たり前のことです。

早い話、利幅の多い価格だけ要求し、
それに見合う仕事を提供せず、
自分だけの儲けを意識した仕事ぶりでは、
1回はだませても、次がありません。

その逆に、いくら赤字でもその仕事ぶりが客を納得させ、
もしくは喜ばせることができれば、
次のビジネスがあり、口コミまで期待できることになります。
儲けはこうして生まれてきます。

ある取引先からこんな商品が欲しいとリクエストされました。
商品を探し、サプライヤーを探し、価格交渉をして、
いつでもお店に卸せる体制ができました。

しかし、卸業者や代理店から買うユニットは大きな単位、
その顧客への販売だけでは大赤字です。

そこで私たちは、すぐに他の顧客に
新しい取り扱い商品としてプロモーションを開始し、
短時間に購入商品を回転させます。

採算が合わないではなく、採算の合う仕事にします。
採算とは理屈や計算でなく、
実際の行動の結果判断できるものです。

採算が合わないと感じる人は、
興味のない仕事に対しては、
苦労してまでやる必要を感じないということであり、
関心がないからやるつもりはないということかもしれません。

つまり、自分のいつも通りの仕事を
いつも通りのやり方で仕事することしか頭にない人、
新たな展開を考えていない人ならば、
その仕事に対して興味がないので、
実際に採算うんぬんを検討する必要を感じないことになります。

余計なことはせず、本業に集中する意識でしょうが、
その意識が場合によっては
自分にとっては新たなビジネスとなるチャンスを
弾き飛ばしてしまうことにもなります。

私の場合は、頼まれ仕事は一応二つ返事で引き受け、
一応仕事をこなす一方、
それが新たなビジネスチャンスにつながらないかを検討しますので、
結論として頼まれ仕事のおかげで、ビジネスは成長しております。

常に次の展開を念頭において頼まれ仕事を引き受けると、
必然的、強制的にビジネスチャンスを模索させますので、
よい刺激になり、ありがたいことです。

本業と結びつける周辺ビジネスの創造を意識して行動、
すると採算は合ってしまうものです。
というより新たな方向性まで見えてきます。

私のビジネスは人材、つまり、人=財、
だから彼らに活躍してもらえれば、
繁栄が訪れるというのを基本としております。
人=人件費=負担=コスト=削減対象とはとらえません。

ですから、人海作戦ビジネスを展開します。
一見採算の合わない展開です。

まして人海作戦、戸別訪問、露出を基本としており、
相手に直接会うことをポイントにしておりますので、
それこそ採算の悪そうなビジネス展開です。
しかし、すべては3か月以内に採算が合っております。

たとえば、医療用プレイテックスグローブ販売を依頼されたとき、
私たちはハードウェア業界相手にビジネスを展開しておりました。

ハードウェア業界相手の取り扱い商品の中に、
各種手袋を卸しておりましたので、
手袋を縁に頼まれた仕事です。

頼まれ仕事は二つ返事で受けることが主義ですので、
すぐに依頼を引き受けました。

さて、まったく異質の業界にどうアプローチするか、
それを考えました。

ハードウェア業界では、手の安全、汚れから手を守るのが手袋ですが、
今度は手の安全を守る以外、
衛生面とフィッティングが鍵ということがわかりました。

従来の手袋は、早い話手に入りさえすればそれで用が足りますが、
治療行為に使用する以上、フィッティングが重要と考えました。

そこで医療業界の看護婦にはフィリピン人が多いことを知り、
さっそく業界のフィリピン人に接近し、
試してもらったところピタッとフィットするとの話。

そこで現在使用中の商品と比べてもらったところ、
私の商品のほうが手にピタッとくるとのこと。

価格を従来商品と同じに設定し、
どの医療業界に的を絞るかを決めるため、
いろいろな科目の診療所を訪問して、
数の多い歯科医師に絞りました。

いろいろな診療所を訪問し、反応をチェックしている最中、
あるセールスマンが、ある内科医から、
君たちの商品の可能性がどのくらい有望か知っているかい、
君たちはミリオネアになれるよと言われ、やる気満々に。

しかも、時はエイズ騒ぎが始まったとき。
時は今。後は行動あるのみ。セールスのみ。

さっそく担当地域を決め、全社員で戸別訪問を開始。
見本の箱をあちらこちらに配りました。

どこでも当然従来のサプライヤーから購入しており、
特別不便など感じていませんでしたが、
積極的にアシスタントに試してもらうデモをしました。

結果?
多くの歯科アシスタントは、
私の手袋のフィッティングのよさにビックリし、
それを口にしました。

私たちは次々と歯科医回りを続行し、
かたや訪問済み診療所からの注文を待つことにしました。

なぜなら、どの歯科診療所にも、
従来注文した在庫がたくさん残っているからです。
彼らが在庫を使い切るまで待つことにしました。

結果?
たくさんの注文をもらいました。
そして、継続サプライビジネスになりました。

うまくいった理由?
売り込みポイントを明白にしたからです。

フィリピン人相手の小さな手は、
アメリカ製は少しゆるすぎました。
しかし、私の商品は彼らの手にピッタリだったからです。

では、なぜその点に気づいたか?
ハードウェア業界へ手袋を卸していたからです。

その市場での手袋と今度の業界での手袋の意味を検討した結果、
愛用ポイントが違うことに気づいたからです。

後続サプライヤーでありながら、市場に食い込めたのは、
価格を同じにおさえ、見本をばらまき、
そのフィッティングを実感してもらい、
業界でのファン作りに専念した作戦が、うまくいったからです。

他の業界にいたことが、違い探しを意識させ、
おかげで売り込みに成功しました。

自分の本職に関係ないから余計なことなどしたくない、
わざわざ投資までして新しいことなどしたくない、
やってもいいが、儲かるかどうかわからないからやめておく、
その程度の儲けならやめておく、
その仕事にかける時間などない、
その仕事をすれば残業代を払うことになるから採算が合わない。

あなたはこういった理由で新たなチャレンジを蹴ってはいませんか。
やってもいないことに頭で結論づけしてはいませんか。

もしかしたら、それは
従来の経験を生かすチャンス、
現在のビジネスを活性化するチャンス、
新たなビジネス展開をもたらすチャンス、
従来のビジネス展開に収益性アップをもたらすチャンス、
そういう意識で新たな出会いを眺める目を曇らせてはいませんか。

チャンスはいたるところにあり、
毎日あなたの目前に現れています。
それらに対してあなたは、
採算が悪い、割に合わない、そういう理由付けで、
新たなチャレンジに腰を引いてはいないでしょうか。

気になりませんか、あなた。

(メルマガ『アメリカ発!「スモールビジネス」成功のセオリー』2015年2月23日発行 Vol.764より)