「世界どこに行っても通用する戦略」、それを実践する経営者、

そういう人はどこにいても成功します。
それが「地元の大衆を相手にする」経営姿勢です。

今はインターネットの普及に伴い、
誰でもが大きな夢の持てる時代になりました。
クリック一つで世界を相手にできる時代です。

しかし、こういった風潮のおかげで
足元を固める姿勢がうとんじられ、
市場の規模は大きくても、
実際のビジネスボリュームに対する採算は
派手な活動ほど報いられていない現実が登場しだしています。

チャンスは今いる場所にある、
そういう見方が必要かもしれません。

そして、その地元の影響力を駆使して世界を相手に、
という展開が出てくるかもしれません。

ちょうどハリウッドで成功すれば
世界がやってくる理屈と同じです。

(なお、「地元」の定義は各経営者が決めることで、
自分の所在地を中心軸にして
自分のビジネスが責任をもって対応できるビジネス範囲になります。)

それでは、そんな地域限定的な発想で
大きく成長できるのだろうか、
そう疑問に感じますか。

自分のビジネスビジョンと
自分のビジネスの果たす地域社会への役割、
そういうテーマをスキップし、
ただ、売る、売れた、という一点だけで行動してしまうと、
市場の大きいことが可能性を広げると
短絡的に結論づけてしまうビジネスが多く、
おかげで足元を固める意識が薄れます。

私のお客は(従業員は30名程度)
カリフォルニア州限定のビジネスを展開し、
1年半であれよあれよという間に年商400万ドル以上を達成し、
目下1000万ドルに向かって邁進中です。
ウェブサイトも持たないままでの展開です。

彼女の成功秘訣?
教えてくれません。
自分が住むカリフォルニア州1州だけでこれだけのビジネスですので、
次の州に着手したらどうなることか、楽しみいっぱいです。

足元を固めるとは、精神論ではなく、
実際にビジネスチャンスが存在する事実を教えてくれます。

そういう風潮を見越したように、
インターネット業界、携帯電話業界では、
ローカルエリアネットワークがテーマになっています。

利用者がすぐ近くにある
利用したいビジネスを検索したいニーズを満たそうと
皆必至になっています。

おかげで大手検索会社は、一地域にネットワークを持つ
小さな検索会社の買収を繰り返しています。

利用者の必要が大きければ大きいほど、
検索内容も多様化し、
それに伴い地域からの広告収入が増えるわけですので、
検索会社の動向としては当然の動きです。

もちろん利用者の利便性は高まりますので
市場からは歓迎されています。

ビジネスにはお客が必要です。
そのお客を誰にするかは、
各ビジネスのビジョンやゴール、位置する場所によって左右されます。

しかし、はっきりしていることは、
地元の大衆を相手にしないビジネスでは
将来に限りがあるということです。
まずは足元を固める、そうありたいものです。

昨今はインターネットの普及で、
無意識に誰でもが世界を相手にしています。

物品販売であればそれで成り立ちますが、
サービス業ではそういうわけにはいきません。

また、物品販売であっても、
それで成り立つビジネスばかりとはかぎりません。
地元の客が来なければ存続できないビジネスはいくらでもあります。

特に、店舗を抱えたスモールビジネスの場合、
地元が動かなければ成り立たないのが現実です。

では、足元の市場で生き延びていく、
成長していくためにはどうしたらいいのでしょうか。

はっきりしていることは“仕掛けが必要”です。
黙っていても向かうからやってくる、というビジネスなどありません。

それでは、どういうやり方をしたら
地元の大衆が動くようになるのでしょうか。

例えば、病院、診療所、美容院、ネイルサロン、
車修理工場、カーディーラー、大手食料品店が、
地元の大衆を無視したとしたら
いったいどうなるでしょうか。

もう少し身近な存在として、
レストランやバーが地元の大衆相手戦略を持っていなかったとしたら
いったいどうなるでしょうか。

昔、ある日系スーパーが大繁盛し、
そこであちらこちらに支店を出しました。
すると本店の売上、客足が大きく落ちたのです。

地元の大衆相手といったテーマに無頓着で、
日系社会、アジア人社会といった総論的展開が引き起こした問題でした。

本店所在の地域社会への積極的関与姿勢が薄かったことが、
支店オープンで一気に問題として浮上したのでした。

同じような問題として、大手企業の業績低迷により、
いわゆる企業城下町の沈下が取りざたされています。

サプライサイド一辺倒の取り組み姿勢が、
地元の大衆相手のビジネス展開という意識を
忘れ去らせた悲劇かもしれません。

地元を人材確保の場として捉えるだけではなく、
市場として捉える姿勢が必要です。

例えば、炊飯器製造メーカーは、
同じ炊飯器であっても、その地域特性に合わせた商品開発を行い、
地域を相手にする姿勢で世界を相手にしているようです。

世界的フランチャイズチェーンでも、
地域特性に対応した展開を行いだしており、
世界市場という総花的展開ではなく、
地域に根ざす展開を行っているようです。

例えば、もっと身近な例として、
旅客運送業(バス、電車、タクシーなど)は、地元の人の便益を考え、
利用しやすい体制づくりに邁進しています。

一般商店の御用聞き展開も地域密着展開になり、
私たちの弁当宅配もそういうアプローチを駆使し、
成長しております。

今回は、地元の大衆相手とはどういうことなのか、
どういう点がポイントになるか、
そのあたりを考えてみましょう。

世界のどこに出ても通用する経営姿勢、
それは地元の大衆を相手にする経営姿勢で、
それがあればこそ成功します。

地元が動けば、地元が他を引き寄せる力、魅力になり、
ビジネスはその結果を享受できるのです。

もちろん流れ込むのはお客だけでははなく、
人材や資金、投資も流れ込むことになります。

例えば、地元の祭りが有名な場所には、外部からの人出が増えます。
あとはどうやってそれを外部に知らせていくか、
のテーマに取り組むことになります。

現在ロサンゼルスの日本人街リトル東京はどんどん開発されており、
私が渡米した当時とはまったく様変わりしましたが、
多くの人種のビジネスと資金が流入し、
人の集まるコミュニティーに発展しています。

この足元を固めるという考え方は、
社員、人材を動かせばビジネスに成功できる、
固定客を動かせば成功できる、
取引先を動かせば成功できる、
国の経済は国内総生産が高まれば成功できる、
これらに通じる考え方になります。

このときに必要な考え方は、
標準化、規格化と、それと矛盾するような個別化を
どう扱っていくかになります。

全米展開、世界展開とは、
そういう心の準備を必要とする展開になります。

その上で出てくるのが、
それではいったいどうやって彼らをファン化させるか、燃えさせるか、
自発的に動いてもらえるようにするか、
彼らの勢い、エネルギー、ダイナミックな動きを
どうやって他の動きに触発させていくのか、のテーマになり、
それに取り組むことにより、成功を実現できることになります。

IT的には、住民にニーズの高いアプリケーションをつくり、
それにより地域に住む住民同士、ビジネス同士を結びつけ、
コミュニティーをつくっていくやり方が駆使されています。

新米パパ・ママ育児相談SNS、ショッピングサービスアプリ、
デーティングサービスアプリ、駐車スペース確保アプリ、
地域のビジネス同士を結びつけるアプリ、
ウーバーのごとき配車サービスアプリ、
地域の人間同士やビジネス同士を結びつけるアプリなどが多数開発されており、
同じ地域に住む者同士がビジネスしたり、
集まる体制ができあがってきており、
ビジネスとしてはそういうシステムを駆使する必要があります。

コンビニ業界では、通りすがりのお客に頼らず、
地元のお客動員戦略を重視し、
その具体的ツールとして注目されているのがモバイル対策で、
クレジットカードからお財布ケータイ化の推進に伴う
プロモーションに力を入れているようです。

携帯電話を支払い手段として捉えるほか、
節約の道具として使ってもらうことにポイントをおいています。

具体的には、リベートプログラム、店内ギフトカード、
関連商品の紹介による売上アップを図っています。

また、アマゾンのピックアップ場所として
地域顧客の動員を図っています。

ある調査によると、過去6か月で、
オンラインで注文、最寄りの店舗でピックアップしたとする消費者は、
調査人口の45%という数字も出ています。

このような大手の積極的なIT活用戦略に対して、
スモールビジネスはどういうやり方をしたら
顧客動員を図れるでしょうか。

ポイントとしては、地の利を活かすことです。
顧客の身近にいる、直接対話ができる、交通の便がよい、
直接消費者の目で確認してもらいやすい、
新鮮さなどの強みを活かす、
地元産業の強調などの強みを活かし、
皆が出かけやすい環境づくり、プロモーションが不可欠です。

具体的には、地域のイベントと連動したビジネス展開、
地域の組織(学校、教会、寺院など)のニーズと連動したビジネス展開、
地域住人のニーズを提供するビジネス展開などがポイントになります。

私の地元であるガーデナ市(人口6万人)では、
フリーウェイの便がいいという地の利を駆使し、
大規模ファーマーズマーケットやスワップミートが展開されており、
そこに小さなビジネスが出展し、
小さな者が寄り集まって大きな力となり、
地域の住人を動員しています。

次は組む相手の選別、提携です。
地域社会の要は、学校、教会、寺院、病院、銀行、市役所で、
これらをビジネス展開の一助にくわえる姿勢が重要です。

また、各大手ビジネスの支店経営に
うまく加担することが必要になります。

これらの組織では、地域社会との連携をテーマにしており、
その彼らのニーズにマッチする活動を展開することにより、
地元の大衆を動員することが可能になります。

地元の大衆を相手にするマーケティングツールを活用する、
その地区専門の戸別チラシ配布会社、
ローカルテレビ局、ローカルラジオ局、ポッドキャストなど、
低予算で利用できるツールがありますので、
試されたらどうでしょうか。

マスメディアに、自分の商品やビジネスを、
地域社会にとって画期的ニュースとして
取り上げてもらう工夫をしてみてください。

私はときたま利用しますが、
ローカルニュースとして取り上げてもらったときは
反応は大きく、結果も出ました。

特別なイベントは活用しましょう。
〇〇完成式、市創立○○年、○○校優勝祝賀会、
リトルリーグ、サッカー教室、お稽古事教室など、
特殊なイベントに自分のビジネスを利用してもらう工夫を考えましょう。

他人の力を借りない自助力がスモールビジネスの基本です。
例えば、個別訪問セールスはビジネスの基本です。
だから実行しましょう。

あなたが動き回る、それこそがあなたのビジネスを周知させ、
結果を出していくもっとも確実な方法です。

店舗展開においては、通りがかりの人を
無駄なく集客する工夫をほどこしましょう。

例えば、入り口を楽しさいっぱいで飾り、
入りたくすることが必要です。

中に入ったら、あなたの店なりの独自性、カルチャーを
味わってもらう工夫をしましょう。

彼らの従来のカルチャーを
あなたのカルチャーに染める意気込みで取り組んでみてください。

物を売らず、自分の店での印象深い
エキサイティングなひとときを売る工夫をしてみてください。
すると次回もまた戻ってくるチャンスが増大します。

多くの方は、売上アップに対して、
営業時間の拡大、宣伝広告、人員の増大、安売り攻勢でと
短絡的結論を出しますが、
工夫次第でいくらでも売上アップ、集客は可能です。

その後は、いかにに口コミを拡大させるかの工夫を
ほどこしてみてください。

地元の大衆は地元のビジネスを応援したがっています。
いなくなると不便になるのは自分たち、
それを知っているからです。

しかし、最寄りのビジネスが、
地元住民のニーズや欲望を満たしてくれないと、
他にその答えを求めざるをえません。

そのギャップをいかに埋めていくかが、
地元の大衆動員テーマになります。

ファッションに敏感な人は、
地元の店でもそのファッションを楽しみたいと考えます。

新商品が登場したら、
地元でもその新商品を入手したいと考えます。

困ったとき、いつでも飛び込めるように
身近なところにあてになるビジネスが存在すると助かります。
地元の産業を後押ししてくれるようなビジネスがあると助かります。

これから高齢化が進む中で、
地元での高齢者用サービス、商品が求められています。

高齢者とは、運転ができなくなることを意味します。
歩いていけるところが重宝される時代です。

また、宅配が歓迎される時代になりました。
大きな店舗は、高齢者、病弱者には行きたくない場所です。
疲れるからです。

長い列に並ばず、さっと用を足せるビジネスは
誰にとってもありがたい存在です。

地の利、人の利、世の中の動き、スモールビジネスの利点、
それらに焦点を合わせ、
顔の見えない世界ではなく、
お互いを理解しやすい地元を相手にしたビジネス展開、
それこそが、どこに出ても成功を手にする確実な方法、
そう信じて行動したいものです。

昔、私のビジネスは、
アメリカ全土から飛び火的に世界へ広がりましたが
(オーストラリア、カナダ、南アフリカ、香港、台湾、チリなど)
彼らは長続きしませんでした。
やはりビジネスの成長はアメリカでした。

アメリカの各州総代理店30社を応援するのと同じ程度の応援が
できなかったことが原因でしたが、
自分の目の届かない場所での展開は難しいものだと
つくづく感じたものです。

地元とは自分が住む場所。
どうでもいいではすまされない場所です。

自分の住む社会をどうしたい、
それを考えることがエコノミーという言葉の原義ですが、
スモールビジネス経営者としては、ぜひそういう意識で、
地元の大衆を動員、できれば総動員するつもりで、
ビジネスに取り組んだならば、
思いもしなかったような展開が始まるのではないでしょうか。

皆様が地域社会と一緒にぐんぐん成長していくことを
お祈りいたします。

(メルマガ『アメリカ発!「スモールビジネス」成功のセオリー』2015年9月28日発行 Vol.792より)