経営者は常にビジネスの現状と先行きに注意を払っています。

ビジネスの動きに敏感です。
あなたは自分のビジネスの動きに敏感ですか。

死、怪我、病気は、人生につきものです。
ですから、我々は自分の体調に敏感でなければいけません。

異常に気づいたら、すぐに専門家のところへ、
それにより異常な体調への修正が可能です。

健康で元気な人生をまっとうすることは、
そういう生活習慣があってこそ可能で、
自分だけはそんなことはありえないと、
自らの人生と向き合う姿勢を放棄すれば、
自ら墓穴を掘ることになります。

早い話、健康や元気は、
無関心、無頓着では得られないもので、
自分自身の常日頃の体調管理意識と、
自分自身に向かい合う姿勢があってこそ確保できるものです。

実はビジネス経営にも同じことが言えます。
自分のビジネス体調に敏感であること、
自分の異常を見つめ、正面から取り組むこと、
そして、その相談相手の専門家とは、
経営者である自分自身ということになります。

スモールビジネス経営者は、
よそのビジネスに起きていることは、
自分のビジネスにも必ず起きると意識し、
常に情報、知識の収集を怠らず、
自分のビジネスの体調管理に敏感になり、
異常に対しては自分にあった対策をとる、
そして、常に自分を正面から見つめなおす姿勢を忘れないこと、
それが仕事です。

起きるべきことは起きるべくして起きる、
だから、何が起きても特別なことではなく、
当たり前の出来事、それが真実です。

大成功した企業が潰れる、
何も特別なことではありません。
生は死を伴っているからです。

成功していた企業が左前になる、
当たり前のことです。
健康は病を伴っているからです。

そういう当たり前になる前に、
その否定的兆候に対応していく、
だからこそ、長生き、健康維持も可能になります。

ここで気をつけなければいけないことは、
出回っている経営書に惑わされないことです。

というより、すべて無視して相手にしないことが、
正しい対策をとる方法になります。

一旗会仲間の失明寸前の女性から教わったことですが、
彼女が盲人相手の会に参加したときに気づいたことは、
目の見える人の発想からのアドバイス、機器は、
盲人には役に立たないことばかりだそうです。

つまり、実際を体験していない人の想像からの解決策は、
実務には当てはまらないということになります。

具体的事例を聞いて、
なるほどと納得したのですが、
実は経営書にもその弊害があります。

多くの事例は、うまくいっているビジネス相手へ助言、
かつ、大手ビジネスを対象にした助言で、
トラブルに巻き込まれているビジネス、
悪戦苦闘しているスモールビジネスには
役に立たないことばかりです。

ある医師は、
健康人相手の健康な食事の取り方は一切無視しなさい、
病人のあなたには当てはまりませんと助言していますが、
まさにその通りかもしれません。

人は皆違います。
置かれた状況、環境、症状、対応能力も皆違います。
それぞれに応じた対策があってしかるべきです。
一律の解決策、絶対的解決策などないのです。

資金不足だから資金を調達すれば問題は解決する、
といった問題ではないのが、ビジネスの実際です。

客足が落ちたから宣伝広告、
集客力が落ちたから集客活動開始、
収益性が悪くなったからコスト削減、といった、
直線的な対策では解決できないことがほとんどです。

早い話、業績が悪いのは、
経営者のやり方が間違っているから、
それなら経営者を交代、といった安直な方法では、
ビジネスは成り立たないのです。

もっともスモールビジネスでは、
経営者=自分自身ですので、
廃業しかないということになってしまいます。

病人には病人なりの対応があり、
病弱者には病弱者なりの対応がある。

まったく当たり前の理屈ですが、
その当たり前を忘れて行動してしまうのが
スモールビジネス経営者の実際ではないでしょうか。

それではビジネスの体調管理には
どう対応したらよいのでしょうか。

1. 常態を把握する(数値注目、金銭フロー注目)
2. 異常事態に対応する対策用意
3. 迅速、かつ、柔軟な対応活動

1. 常態を把握する(数値注目・金銭フロー注目)

人間は痛み、熱、動悸、咳、便秘、出血、腫れ物など、
いろいろな異常症状や身体的異変により異常を認識し、
医師に駆け込みます。

医師はその症状は何によって発生しているのか、
血液検査、尿検査、便検査、スキャンなどの検査を行い、
その数値的異常、目視できる異常により病因を決め、
それに対して治療活動を行います。

つまり、数値的異変、ビジュアルな異変が、
問題解決への手がかりになります。

経営においても同じで、
経営にスムーズさが損なわれ、
苦しさ、異常を感じるようになった場合、
まずは自分のビジネス専用の経営管理数値をチェックすることです。

一定の数値に大きなブレがある場合、
それを修正する必要があります。

このような経営数字は、
ビジネス業態、業種、会社規模によって皆異なってきますので、
自分のビジネスなりの標準的数値を算出し、
とりわけ成績のよかったときの数値に調整していけば、
自分のビジネスなりの理想的数値をはじきだすことができます。

それをグラフ化すると、
すぐに自分のビジネスの動きを把握できるようになり、
年度別比較グラフが今後の対策を示してくれることになります。

売上変動、コスト変動、在庫変動、資金フロー、収益性変動は、
最低でも常に確認してください。

なお、数値に出ない社内雰囲気、仕事環境は、
売上変動、コスト変動に出てきますので注意が必要です。

例えば、大手食品チェーン店によくあるのが、
冷蔵食品をそのあたりに放置されることにより発生する損失です。

顧客が購入するつもりでピックアップしたが、
途中で気が変わり、そのあたりに放置するケースで、
かなりあるそうです。

そういう商品をいち早く発見し、
すぐに冷蔵庫に戻すのがストック係の仕事ですが、
見つけきれない場所に放置されると、
商品が痛み廃棄処分になります。
ビジネスの損失はこんなところからも発生します。

また、よくあるケースは、
消費者がパッケージを破り商品を試食してしまうケースで、
売り物にならず損失になります。
その他、盗難が損失の中では一番率が高いそうです。

先日、ボトル入り水の35本入りパッケージを20個購入しましたが、
担当してくれたストック係が、
代車に放り込む形で積み込みこみました。

オフィスについて降ろしだしたところ、
2つのパッケージに水漏れを発見し、
さっそく交換のため店に戻り、
再び戻って今度はすべてをチェックしたところ
もう3パッケージに水漏れを発見して、
再び交換のため店に出かけました。

担当者が放り投げる形で代車に積み込んだとき
各パッケージは40.4パウンド=18.33kgの重さがあり、
その勢いでボトルにヒビが入ったようです。

雑なストック係の仕事のおかげで、
そのビジネスは損をしたことになります。

各パッケージでは何本のボトルが損傷したのかわかりませんが、
社内教育、訓練が不徹底のようです。
数値変動はこうしたところからも発生します。

2.異常事態に対応する対策用意

問題の解決には、絶対的やり方、
各ビジネスに共通したやり方などありません。
各ビジネスがそれなりに考える必要があります。

例えば、不良品、間違った商品購入の場合、
レシートを持ってくれば自動的に返金するのが
大手チェーン店のやり方です。

システマティックに対応し、
損失は自動的にサプライヤーに回す、
大手はそれが可能でしょうが、
スモールビジネスの場合そういう具合にはいかず、
同じレベルの仕事をすればたちまちビジネスに影響が出ます。

そういう場合どう対応すべきか、対策を用意し、
社員に徹底していく必要があります。

スモールビジネスの場合、
利用できる保険は必ず買っておくことをお薦めします。

取引には必ず契約書を用意しておかないと、
後のトラブル処理に時間とお金がかかります。

金銭の取り扱いは、
それがローンであるか投資であるかを明記した書類を
交わしてからにしてください。

よくあるトラブルとして、あれは貸した金だ、
いや、投資してもらった金だの争い、
貸したお金を返してもらえないケース、
売掛金の回収不能、パートナーとの争いが、
スモールビジネスには多いようです。

準備がないからトラブルになる、
そういうケースを排除する体制が必要です。

3. 迅速、かつ、柔軟な対応活動

問題処理に「そのうちになんとかなる」の放置姿勢は、
ビジネスの命取りになります。
問題意識が明確なうちに対応してください。

多くの方は、問題を直視することを回避し、
おかげで問題自体をどんどん大きくしてしまい、
あとで大きな費用やその重大さに泣くことになります。

昔、私の知っているレストランの女性店主は、
顧客から、○○の中に石が入っていて、
それをかんだため歯が欠けてしまいましたと苦情を受けました。

彼女はそれを重大事ととらえず、
そんなことを言われても困る、
証拠のその石を持ってきてちょうだいと、
問題対応を放置しました。

結果?
彼女は訴えられ、1万ドルを支払う羽目になりました。
話し合いのチャンスを自ら放棄したこと、
ライアビリティー保険を買っていなかったこと、
迅速、かつ柔軟な対策を怠ったことが
損害を大きくしてしまったケースです。

私の他のお客は、
自分の土地建物の上でビジネスを展開していましたが、
ある日、見知らぬ人が店に入ってきて、
いろいろ見て回っているので不思議に思い、
何をしているのですか、と聞きました。

すると、その人が、この不動産が売りに出ているので、
見に来ているのですと言われてビックリ。

聞けば、公報で税金未納のため、
競売にかけられていたとのこと。

あわてた彼はすぐに納税し、ことはそれで解決しましたが、
危ないところでした。

滞納通知、納税督促状が来ていたはずで、
そういう書類を放置していたための出来事でした。

人間、嫌なことには目をつぶりたい、
後回しにしたいという傾向がありますが、
それがビジネスの命取りになります。

すべきことはすぐする。
そういう姿勢が重要です。

ビジネスにトラブルはつきものです。
目視できるトラブル、密かに忍び寄るトラブル、
それらが発生したその時点で対応すれば、
問題は問題でなくなります。

しかし、もし放置するようなことがあれば、
それは問題に発展してしまうのです。

では、どうやって問題の早期発見をするか、
それは経営者がビジネスに真剣に取り組んでいるからこそ、
正面から取り組んでいるからこそ感じとることができるのです。

経営数値の変動は、それを警告してくれます。
だから、経営者はそういった経営感性を磨くとともに、
常に自分なりの経営数値、指標を用意し、
いち早く異常をつかむことが必要です。

さて、自分のビジネスには問題など存在しない、
そう思い込んでいるあなた。
本当に問題などありませんか。

大丈夫ですか、あなた。
本当に大丈夫ですか。

(メルマガ『アメリカ発!「スモールビジネス」成功のセオリー』2015年2月9日発行 Vol.762より)